平成25年度・26年度を通じて、以下の通り研究を遂行した。1、ドイツおよびスイスでの調査:当初の研究実施計画では計3回の渡航を予定していたが、「経験者への調査」を断念したため(後述)、2回の渡航となった。しかし、研究実施計画に記載していたベルリンのシュタイナー学校およびドイツの養成機関での調査に加え、スイスの養成機関でも調査が可能となり、養成段階についてのより詳細な調査が可能となった。2、日本での調査:当初の研究実施計画では、藤野シュタイナー学園においてのみ、計5回の調査を予定していたが、新たに横浜シュタイナー学園での調査が可能となった。このため、藤野にて計4回、横浜にて1回の調査に変更した。また、藤野では、オイリュトミー療法(治療オイリュトミー)の診断に関わる医師に対してもインタビュー調査を行うことができた。 調査の対象について、オイリュトミー療法士の方々の意見から、経験者である子どもとその保護者にインタビュー調査を行うことは困難であるとの判断に至り、学校現場でオイリュトミー療法を行う療法士、および療法士の養成に携わる療法士の方のみにインタビュー調査を行った。うち3名の療法士の方の実践(学校×2、養成機関×1)において参与観察を行った。 これらの調査を通じて、これまで日本では著作・論文等でほとんど言及されなかったオイリュトミー療法について、実践・養成の二側面について詳細なデータが得られた。また、研究の目的に記載した、道徳教育と「超越」的なものの関係だけでなく、教師のまなざしと「超越」的なものの関係について、1、「超越」的なものが教師に「問い直し」の契機を与えること、2、その問い直しによって、子どもの「現れ」がよりよく観察できること、3、その問い直しにはグループでの客観化が有用であること等、日本の教員養成における子どもの見方の養成を考える上で重要な知見が得られた。
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