平成26年度の研究では、昨年度から引き続き、詩の創作を行う授業において「書く場面」以外の子どもたちの活動と交流の様子に焦点を当て、そこで生じる学習過程の把握を実現するための調査を行った。全国大学国語教育学会名古屋大会では「読むことと関連した詩創作の授業づくりに関する考察 : イギリスにおける所論を手がかりに」という題目で、イギリスにおける詩を読む力と書く力の関連指導の内容を分析した。そこでは特に、次のような点において詩を読む力に貢献する創作指導の枠組みを見出した。(1)積み重ね:書く前の段階における様々な刺激となる活動、(2)集中して書く:短時間で集中して書く活動、(3)読み上げる:自分の書いたものを読んで共有する活動、といった枠組みである。そしてその中でも読み上げの時間を交流の時間と同義と見定め、その活動が作者と読者の平等性を保証するために重要な意義を持ち、さらにそこで生じる子どもたちどうしの考えや思い・意見の違いといった「摩擦」が、子どもたちの思考を促し新しい読みを生みだすことにつながることを見出した。また教師が、詩を読み考えながらコメントを付す様子をモデルになることも子どもたちの活動と学びを促進するために有効な手立てとなることが分かった。 また、イギリスで開催されたカンファレンスに参加し、最前線で取り組まれる授業論についての情報収集を行った。そこでは、詩を読んだり話したりする活動の他に詩を詠む・見る活動の重要性についての議論が活発に行われており、他のジャンルにはない詩特有の活動として子どもたちの学びに対する意義を持つという知見を得ることができた。 さらに、日英の詩教育論の比較研究を発展させるための研究交流の機会を得て、体験参加型による比較方法としてワークショップの共有による学習ツールの開発計画を立ち上げ、今後の研究の発展につながる足がかりを得ることができた。
|