研究課題/領域番号 |
25885057
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大薗 博記 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (50709467)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 社会的ジレンマ / リーダーシップ / 罰 / 統治 |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的ジレンマにおける協力が、特定個人(リーダー)による集中的な非協力者への罰によって構築される可能性を検討するものである。具体的には、リーダーへの他の成員からの支援、そして、その支援を元にしてリーダーが罰するという構造を実験室で設定し、リーダーが連動罰(非協力者も非支援者も両方を罰する)を行うことで、十分な支援が集まり、かつその支援を基にした非協力者への強い罰がなされ、協力が形成されると考えた。本年度は特に、どのような条件がそろえば、このような特定個人への支援集中とその個人による連動罰が自生するのかを実験により検討した。実験では、成員全員が参加する社会的ジレンマステージ、誰が誰に対しても支援可能な支援ステージ、誰が誰に対しても罰が可能な罰ステージを設定し、その状況で特定個人への支援の集中とその個人による連動罰が自生し、高協力が達成される条件を探った。全員が完全に対等で、何の情報もなければ、特定個人への支援集中は起こりにくいだろう。本研究では、「集団成員の罰行動の情報共有」と「集中による罰効率の増大」があれば、誰がリーダーにふさわしいかが共有され、また、集中することのメリットが認知されるため、リーダーによる集中罰が自生すると考え、実験を行った。しかし、実際にはこれらの条件がそろっても、特定個人への支援集中とその個人による罰は自生しなかった。これは、各成員が「誰がリーダーにふさわしいか」の判断がつかず、それにより支援を躊躇したことが原因だと、実験後の質問紙の自由記述から読み取ることができた。つまり、当初考えていたよりも、リーダーによる集中罰の自生を可能にする条件は複雑であることが分かり、次年度はさらなる要因を加えた検討が必要だと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、複数回の実験を行い、十分なデータを得る予定であったが、実験協力者からの応募が予想より少なく、計画の半分程度しかデータを取得できなかった。また、リーダーの集中罰が自生する必要条件として、当初は「集団成員の罰行動の情報共有」と「集中による罰効率の増大」があると考え、実験を行ったが、これらの条件がそろっても、特定個人への支援集中とその個人による罰は自生しなかった。これは、各成員が「誰がリーダーにふさわしいか」の判断がつかず、それにより支援を躊躇したことが原因だと考えることができた。つまり、当初考えていたよりも、リーダーによる集中罰の自生を可能にする条件は複雑であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
リーダーの自生が起きなかった原因として、リーダーにふさわしい人物について、集団成員間で共通認識が早期に築けなかったことが大きいと考えられた。そのため、それを可能にするような要因を実験場面に導入して検討する予定である。一つ目に考えられるのは、「リーダーにふさわしい人物の投票制度」の導入である。これにより、成員内で誰が支援されるべきかの共有が促進され、リーダーの自生が起こりやすくなると考えた。二つ目に考えられるのは、「各成員の罰行動の意思表明」である。誰がリーダーにふさわしいかわからないのは、誰がどのような罰を行使するつもりかが事前にわからないからであり、事前の表明をさせることで、その不確実性を軽減でき、集中が促進されると考えた。3つ目は、「成員間での罰効率の非対称性」である。成員の中で突出した罰を効率的にできる者がいれば、その人物に罰を任せた方が集団として効率的である。そのため、集中が促進される可能性がある。次年度は、これらの要因を実験に加え、リーダーの自生が起こる条件を検討する。
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