私は、大学院修士過程から、フランスおよびアメリカ合衆国の共和制について一貫して研究してきた。博士課程に進学した後は、フランス共和制体について研究し、とりわけ共和制体改正禁止条項であるフランス第5共和制憲法89条と、憲法制定権力について研究してきた。すなわち、国民主権に基づく国家においては、人民がよって憲法を制定したり、改正する権力を持つが、これらの権力は、89条にも有効であるのか、それとも、89条は法的拘束力を持ち、人民によっても改正可能なのかという問題が、フランスにおいては19世紀から論争の的となり続けているからである。
したがって、最近のフランスの議論を学ぶために昨年度8月にドイツ・ベルリンに出張し、フランス留学時代の恩師であるダヴィッド・カピタン教授と面会し、学術上の交流をより深めることができた。また、8月はフランスの大学は図書館がバカンス中で閉館中であるため、ベルリン自由大学とフンボルト大学の図書館で資料収集し、研究上重要な資料を入手することができた。また、東北大学公法判例研究会において報告の機会を得、主に国内判例の評釈を行い、それを基にして首都大学東京の紀要である法学会雑誌に論文を機構することができた。上述の成果を東京大学名誉教授である樋口陽一先生の研究会において報告し、樋口陽一先生から重要な研究上の示唆を得ることが可能となった。これらの研究活動を基にして、他の憲法研究者たちと共著で書いた判例研究の本を出版予定である。
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