研究課題/領域番号 |
25885060
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
吉田 耕平 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 研究員 (90706748)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 戦争と科学 / 社会科学史 / アメリカ史 |
研究実績の概要 |
本年度は、一か月間のニューヨーク調査と半月間のワシントンDC調査を実施した。これにより、第二次大戦期のニューヨーク都市圏において、四つ程度のネットワーク組織が社会科学関係者を中心に結成されていた事実、およびそれらの経過に関する資料の所在と利用可否を把握することができた。 具体的に、ニューヨーク調査では、コロンビア大学のそれぞれ一機関として設置されているバトラー図書館の貴重書籍手稿図書室、ならびに全米ユダヤ神学院の図書室を訪ねた。これを通じ、①政治科学研究科に設けられた〈ラジオ調査研究所〉の人員および調査活動の公開記録や、②米国の参戦前から冷戦期まで続けられることになる学際的な〈科学・哲学・宗教に関わる会議〉の内部資料が比較的まとまった形で残っていることが確かめられた。 他方、ワシントンDC調査においては、米国連邦議会図書館の手稿図書室を訪ね、ニューヨークから移転されている所蔵の中に、③ロックフェラー財団の主催で政治学者や心理学者が関わった〈コミュニケーション・セミナー〉の経過資料と、④〈コミッティ・フォー・ナショナルモラール〉の経過資料が数多く保管されていることを確認できた。 いずれの組織も、仮想敵国もしくは対戦相手国であった独国と日本に関する情報収集と情報宣伝にコミットしていたことが過去の社会科学史研究において指摘されている。この経過で培われた組織と知見が冷戦期のアメリカ社会科学の主潮流となっていた点で、戦時期の出来事は広く20世紀の社会科学の役割と内実を再検討するために重要なものだったとされている。 ここから、これらの組織が、どのようなプロパガンダ実践を行い、その実践が冷戦下に定式化された理論枠組みにどう直結しているかという点にまで検討を進めるには、膨大な資料群がこの一か所で手に入り、同時代の影響力が最も大きく、研究も手薄である④のコミッティの研究が重要だと判断される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究事業では戦時期シカゴ、ニューヨーク、ボストンの比較研究を旨としているが、最も重要であるニューヨークの社会科学者組織に関して重要性の高い資料群の所在が一年目にしておおよそ明らかになった。これにより、次に重要性が高いボストンの社会科学者組織との比較研究の準備が整ったと言えるため、所期の初年度目標をおおむね達せられたと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ニューヨークとボストンの比較を進めることが第一に求められる。このために、続く渡米調査によって、ボストンの社会科学者組織に関し、同様のボリュームの資料群を見つけることができなければならない。 そのうえで、さらに続く訪米調査によって、再度ニューヨークとワシントンDCへ赴いたうえで、ボストンにも戻り、既に見つけた資料群の詳細な記録を作成し、比較分析を進めていくことが必要となる。
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