本年度は主に3つの課題に取り組んだ。1つは横浜市(以下「市」とする。)の民営化とPFI(Private Finance Initiative)方式、2つめは改良土型PFI事業を事例にリスク、3つめは同事業に対してVFM(Value for Money)と関連分野とのリスクの比較分析である。研究成果は次の通りである。 1つめ横浜市の民営化と市のすべてのPFI事業の概説をとりまとめた。事業形態や方式に対して改善の必要性が見受けられる。また、事業分野も考慮すべきである。事業の特性を踏まえて供給方法を選定することが、市民・事業者等の利便性を向上させる。 2つめの改良土型PFI事業では、事業形態や方式に対して改善の必要性が見受けられる。他方、単なるハード事業や維持管理ではなく事業者の高い技術を引き出すためには、あえてBTO方式を用いて事業者の経営意識の向上と手法を活用することも1つの方策として考えられる。 3つめは、市はPFI方式を単なるコスト削減のみではなく、市と事業者間の適正なリスク配分、循環型社会への寄与、新たな改良土販売といった市場の拡大ならびに販路の開拓、事業者の経営ノウハウを期待していた。これらが高いVFMの実現につながると目論んでいた。しかしながら、VFMではないが事業性に着目すると損益計算書を見る限り、事業収益の確保や継続性は見込めず、事業者の経営スキルを十分に活かしているとは言い難い。リスクに関しては、市は各部局で改良土の販売先を確保し実質的に改良土の販売の需要変動リスクは市がカバーしていた。一方、市の他のPFI事業や他の地方公共団体の関連事業におけるリスク配分と比較すると、改良土型PFI事業は過度に事業者負担が多いのが特徴である。少なくとも一般的な事業ではない。
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