平成26 年度には、前年度に収集・構築した戦闘などに関するデータセットをもとに、内戦中にLTTE の支配領域にあった地域の住民に対する質問票調査を実施した。当該年度の4 月から7 月末までは調査設計として対象地域(県・村など)や対象者の選定を行い、質問票を作成するための準備をするとともに、調査を委託する業者の選定とそれとの調整を行った。こうした設計に基づき、2月から3月にかけて420名を対象にした聴き取りを実施した。上記の通り、この調査では対象者を絞るために、LTTE の強い支配下にあった北部州のキリノッチ県、マナー県、ムライティブ県、バブニア県で質問票調査を行った。
調査では、内戦中における対象者の居住地域、住民組織や活動の変化、民軍関係などを主な質問内容とし、当該期間における個人の経験がナショナル・アイデンティティやコミュニティの社会資本・制度に及ぼした影響を考察した。変数間の関連性などに関する詳細な分析は本研究の今後の課題とするが、内戦中に家族や調査対象者本人への身体的・心理的被害や家屋などへの物的被害を被ったと回答している者が多くいることから、こうした紛争被害がもたらす規範意識や価値観への影響が明らかになることが期待される。また調査では、内戦中に政府やLTTEなどが実施した行政についても回答を求めている。スリランカ内戦では、政府だけでなく、反乱軍側も市民に対して公共サービスを提供していたが、この質問項目により、内戦中の領域統治の経験が紛争後社会における市民意識にいかなる影響をもたらしたのかを示すことが出来ると考える。
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