研究課題/領域番号 |
25885065
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 高崎商科大学 |
研究代表者 |
仁平 京子 高崎商科大学, 商学部, 講師 (70714492)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 高齢者 / 消費者行動 / くちコミ(クチコミ、口コミ) / 社会ネットワーク / 家族 / 集団的購買意思決定 / バンク・ショットモデル / 広告の社会的効果 |
研究概要 |
本研究では、日本の少子高齢化の同時進行を背景として、とくに高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯の消費者行動に対する社会ネットワークとしての家族のくちコミ(クチコミ、口コミ)の影響力や家族の集団的購買意思決定に着目し、高齢者の社会ネットワークや社会関係資本について調査し、日本型の高齢者マーケティングの理論構築を行うことを目的とする。 このようなくちコミの対人的影響力や社会ネットワーク、社会関係資本の問題をテーマにした先行研究には、インターネット上の非対面的な対人的影響力に着目した研究が多い。しかし、総務省の『平成24年版情報通信白書』によれば、平成23年末の個人の世代別インターネット利用率は、13歳~49歳までは9割を超えているのに対して、60歳以上は大きく下落している。とくに、60歳以上の所属世帯年収別のインターネット利用率は、600万円以上で8割を超え、所属世帯年収の低い区分との利用格差が存在する。 以上の点から、本研究では、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯において、インターネット上の非対面的なくちコミよりも、家族や友人からの伝統的で対面的なくちコミの対人的影響力のほうが高齢者の情報源として影響力が大きいという仮説をもとに検証を進めた。平成25年度は、家族のくちコミによる広告の社会的効果に着目し、娘や息子、孫などの家族が高齢者(消費者)の購買代理人となるバンク・ショットモデル(購買者・消費者主体不一致型)を理論構築した。 平成25年度は、日本広告学会第44回全国大会や日本広告学会関東部会、日本消費者行動研究学会第47回消費者行動研究コンファレンスの学会発表、高崎商科大学紀要第28号などで研究成果を発信した。現在、平成25年度の学会発表の研究成果について、日本広告学会や日本経営診断学会、日本消費経済学会などの学会誌や高崎商科大学紀要第29号などへの論文投稿の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献研究では、社会学や社会心理学、家族社会学、消費者行動研究、マーケティング研究における社会ネットワークとしての家族や家族の集団的購買意思決定に関する先行研究の特徴と問題点を整理し、日本の少子高齢社会における高齢者単独世帯と夫婦のみの世帯の消費者行動への適用を試みた。平成25年度は、文献研究の整理と高齢者の消費者行動への適用、平成26年度の予備調査と本調査の実施計画のために、文献研究の分析に多くの時間を費やした。平成26年度は、研究計画をもとに研究時間を確保できると想定できるため、研究の進捗状況は、とくに問題はないと考える。 そして、平成25年度の研究成果は、日本広告学会第44回全国大会や日本広告学会関東部会、日本消費者行動研究学会第47回消費者行動研究コンファレンス自由論題報告での学会発表および報告要旨集、日本広告学会の『広告科学』の第44回全国大会研究報告記録、高崎商科大学紀要などで研究成果を発信することができた。 現在、平成25年度の学会発表の研究成果について、学会誌や紀要などへの論文投稿の準備を進めている。具体的には、くちコミ・マーケティングとマーケティング倫理(日本広告学会第44回全国大会での学会発表の一部)、高齢者に贈るギフトと家族の集団的購買意思決定(日本消費者行動研究学会第47回消費者行動研究コンファレンスでの学会発表)などを研究課題にした論文投稿の準備を進めている。 さらに、平成26年度には、これらの文献研究での研究成果をもとに、高齢者の社会ネットワークに関する都市部と地方都市の地域間格差、高齢者と若者(大学生)の社会ネットワークの世代間比較などを中心的課題として、質的調査と量的調査による包括的な本調査の実施を予定している。 なお、日本広告学会と日本消費者行動研究学会の学会発表のための旅費については、高崎商科大学の平成25年度教育研究費から費用を支出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、くちコミや社会ネットワーク、社会関係資本の文献研究をさらに精査して、予備調査と本調査に向けた仮説設定や質問項目の作成を中心に行う。そのため、平成26年度では、高齢者の社会ネットワークに関する都市部と地方都市の地域間格差、高齢者と若者(大学生)の社会ネットワークの世代間比較、高齢者や家族のくちコミを意図した商品やサービスに関する事例研究などを中心的課題として、企業インタビューや消費者インタビューによる質的調査と量的調査による包括的な本調査を実施する。本研究では、とくに以下の研究課題を中心に、予備調査と本調査により検証を行う。 1、高齢者の消費者行動では、インターネット上の非対面的なくちコミよりも、伝統的で対面的なくちコミのほうが、情報源としての影響力が大きい。 2、高齢者の購買意思決定のプロセスでは、家族や友人・知人、地域の隣人、趣味仲間からの実体験に基づく利用経験の評価情報が、他の情報源よりも重視される。 3、高齢者と若者(大学生)の社会ネットワークの世代間比較を分析することにより、高齢者の社会ネットワークとくちコミの特徴を明らかにする。 これらの研究成果の知見から、平成26年度は、日本の少子高齢社会における高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯の急増を背景とした日本型の高齢者マーケティングと消費者行動の理論構築を行う。そして、平成26年度の研究成果は、日本広告学会や日本消費者行動研究学会、日本経営診断学会などの学会を中心に、学会やビジネス実務に対して、日本型の高齢者マーケティングと消費者行動に関する研究成果を積極的に発信していく予定である。 さらに、今後は、このような日本型の高齢者マーケティングと消費者行動の研究成果について、国際会議での学会報告を通じて、日本の研究成果を海外に発信していくことも中長期的な視野に入れ、研究活動を継続していきたい。
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