本研究は、都市の「遊び空間」がどのように受容され、消費されてきたのかという歴史を明らかにし、都市空間をめぐる論争が「子どものため」というレトリックに揺るがされながら、「子ども不在」のままに空間が形作られてきた要因を考察することを目的とした。 本研究課題に対して、平成25年度では主に「歴史」に焦点を置き、著書『子どものいない校庭』を出版することで、現代社会における「子どものための空間」にひそむ問題点、歴史的に見た際の「子どものため」という語りにひそむ大人の欲望の交錯という問題を整理し、研究課題に応えた。平成26年度は、①公園など都市空間における論争に関する記事を収集し、分析を行うこと、②埼玉県戸田市を対象としたアンケート調査の二次分析、③「都市の遊び空間」をめぐる専門家を招いてのグループインタビューを行うことで、研究課題に応えた。上述した点は、平成26年度の研究計画から実施時期や実施方法の変更はあったものの、いずれも2年間にわたる調査研究を効果的に遂行するために適宜、工夫した点であり、「子どものため」というレトリックを歴史的資料、市町村における実態の分析、専門家の議論という複数の次元から明らかにするためには一定の意義があったと考えられる。 尚、平成26年度に行った3つの研究については、研究実施計画通りに論文投稿などが行えていないが、平成28年3月までに論文投稿や学会発表を行う準備を整えており、本研究課題による成果として公表していく予定である。
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