研究実績の概要 |
本研究の第一目的は、青年期および成人期における自己のセクシュアリティ(性自認や性指向)のステータスが「未定」から「確定」へと辿るクエスチョニングの人々の発達過程の一端を明らかにすることである。そこで、クエスチョニングの発達過程における生態学的システムを解明するために、インタビュー調査およびアンケート調査を行った。質量の手法により、彼らの生態学的システムのヴァリエーションが明らかになった。発達段階により異なるシステムの構成が見出された。 本研究は今後の大規模縦断研究のための基礎研究に位置づけられており、縦断的実証研究に盛り込む質問項目を練り上げることが第二の目的であった。「セクシュアリティの決定は時間経過を含み、他者との関係性や環境との相互作用により生じる」という構成主義的仮説(荘島, 2008)に基づき、質問項目が作成された。すなわち、①他者との関係性と②環境を含む質問項目が作成された。 人のセクシュアリティの発達は未知の領域が未だ多い領域である。本研究の意義は、生態学的環境とともにクエスチョニングの発達過程を明らかにしようとする試みにある。本研究ではセクシュアリティのステータスが未定段階にあり、性自認や性指向が定まらないクエスチョニングと言われる人を対象としたことが重要なポイントである。彼らのセクシュアリティの発達がどのような軌跡を描くのか、またそれはどのような契機によって生じているのかを解明することは発達研究にも一石を投じるものと考えられる。それは単に性的少数者を現在のセクシュアリティの在り様だけをみて「LGBTQ」といったように既存のカテゴリに分類する行為ではない。セクシュアリティの揺らぎというポイント(発達の契機)に着目して時間的経過を含んで捉えなおすことは、人の豊かな性/生を掬い取る行為に他ならないのである。
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