制度派経済学の祖とも言われるヴェブレンは,実践的な問題解決を目指す色彩の濃い20世紀初頭の「制度派経済学運動」の立役者たちとは一線を画す禁欲的科学主義者と位置づけられてきた一方で,辛辣な風刺家,あるいは独自の実践的立場を基礎に据えた社会批判者とも見なされてきた.本研究は,この二つのヴェブレン像の分裂を克服する道を探った.彼の科学史観を,個別に扱われがちな文明史観とつき合わせて読み解くことによって,彼の主唱した進化論的経済学という枠組みが,従来理解されてきたよりも拡がりがあり,実践的関心を帯びた方法論的提案であったこと,また基本的な社会福祉観を別にすれば多少の変化を経ていることを示した.
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