研究課題/領域番号 |
25885075
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
安藤 丈将 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (50434220)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 民主主義 / 社会運動 / 原子力発電 |
研究概要 |
25年度の研究成果は、二つに分けられる。一つは、直接行動が民主主義に及ぼす意味を明らかにしたことである。事例としては、1991年9月~10月に青森県の六ヶ所村にある核燃料再処理施設へウランの運び込みを阻止するために施設前での座り込みを実施した「女たちのキャンプ」を扱った。とりわけ私の研究に特徴的なのは、ケアの概念を使いながら、運動内部のコミュニケーションを考察したことである。直接行動とケアは、最近の政治学の中で重要概念であるが、民主主義の概念を媒介にしながら、両者を論じたことに研究の意義がある。「気づかい」を含んだコミュニケーションというのは、「ニューウェーブ」の脱原発運動とそれまでの日本の社会運動との違いを表すものであると同時に、民主主義論に新しい研究領域の存在を指し示すものである。 もう一つは、脱原発運動の中で生活と政党がどう位置づけられていたかを、各地のアクティヴィストに対する取材を通じて調査したことである。脱原発運動は生活と政治とを媒介するものとして位置づけられ、原発がつくり出す電気という日常的な問題を意識した人びとに対して、政党を介してのエネルギー政策の変更という政治的な課題に取り組む入り口を与えた。調査の意義は、日本の市民社会にとって、長らく課題になっている生活と政治との接合に関して、1990年代の問題状況を示そうとしているところである。生活に関しては社会学者が、政党に関しては政治学者が主に研究を進めてきたが、本研究は社会と政治とをつなぐ理論的な媒介としても重要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研期間の開始以前に準備を進めていたため、取材がスムーズに進行した。山形、大阪、青森、福島、静岡などに在住している「ニューウェーブ」のアクティヴィストに話を聞くことができたのは、事前調査で培ったネットワークのおかげである。科研の支援は、これまでの調査の進行速度を上げる役割を果たした。事前の準備がなければ、当該テーマに関する論文をすでに出し、さらなる論文の刊行も予定することはできなかったであろう。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、グローバル化およびコミュニティという残された二つの領域に取り組んでいきたい。まず、「グローバル化」については、香港や台北に出張して取材しながら、日本の「ニューウェーブ」の運動との国境を越えた相互作用から生まれた民主主義の思想と実践を明らかにする。コミュニティについては、原発周辺で独立メディアや地域政治に関わってきた人々にインタビューをしながら、コミュニティにおける民主主義の展望を探っていく。 さらに、平成25年度の研究成果、特に生活と政党に関連する成果を学会誌への投稿や学会報告という形で発表し、フィードバックを受けることで、それを研究に反映させていく事も同時に進めたい。
|