研究課題/領域番号 |
25885077
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
竹内 祐介 立教大学, 経済学部, 助教 (30711238)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 鉄道 / 帝国 / 植民地 / 朝鮮 / 台湾 / 分業 / 物流 |
研究概要 |
本研究の課題は、朝鮮および台湾の鉄道貨物輸送データベースを利用して、各地域間の物流構造と消費の地域的変容を明らかにし、それを比較することで両地域の特徴を抽出することである。この研究目的に照らし、本年度では、日本植民地期台湾における鉄道貨物輸送分析に基づく物流構造、地域間分業の実態について、同じく日本植民地であった朝鮮との比較研究を実施した。その成果は、2013年12月に行われた立教大学・台北大学主催の国際シンポジウム「植民地台湾の社会資本と流通」で口頭発表を行った(「鉄道貨物の「島内」輸送と建設資材流通」)。以下、その成果内容について記す。台湾は朝鮮と比べて、地域的に広く、かつ高密度(面積・人口当)で鉄道が敷設されていったにもかかわらず、台湾内の物資移動に果たす鉄道の役割は小さく、島外(具体的には、日本内地や満洲地域)との間の貿易品を運搬する役割が大きかったことが明らかになった。これは、台湾島内の各地域が、比較的似たような産業構成、特に農業に偏った特徴を持っていたこと、加えて内陸都市の発達が十分でなかったために、地域内の分業が生じにくかったことがその理由として指摘できる。反対に、朝鮮の場合は、半島内の地域差が、台湾に比べると大きく、鉄道が敷設されることで地域内の分業が促進されたといえる。このような両地域内部での地域差の相違は、結果として日本帝国内部における役割(台湾=一次産品の供給地、朝鮮=一次産品のみならず中間財の供給地)の相違にも表れていると考えられる。従来の研究では、これを日本の植民地政策の相違から説明してきたが、両地域の持つ本来的な地域差(気候など含む)から説明するという植民地比較研究の新しい視点を提供することができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた朝鮮・台湾の比較研究を実施できた点で、順調に進展していると評価できる。但し、物流構造、地域間分業の相違を抽出したのみで、「消費」部分の比較検討にまでは至らなかった点が反省点である。また戦時期の統計資料を探すべく中国への調査を実施し、部分的ではあるが戦時期に関する新しい資料の発見をできた点も評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、朝鮮・台湾の比較研究をおこなっていく。申請時の計画通り、両地域での鉄道敷設地域と非敷設地域の間での物流・消費の比較研究が具体的目的となる。鉄道が敷設されることによる一般的影響を両者の共通性から明らかにするとともに、朝鮮・台湾で相違する部分を抽出し、その要因を明らかにすることで、両地域の市場としての特質について考えていく。また、前年度シンポジウムで口頭発表した内容について活字化することも同時に進めていく。(2015年2月刊行の図書にて行う予定。)
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