研究課題/領域番号 |
25885078
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
深田 耕一郎 立教大学, 社会学部, 助教 (40709474)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 介護保障 / 障害福祉サービス / 介護保険 / 制度の谷間 / 在宅介護 |
研究概要 |
本研究は障害福祉サービスと介護保険制度におけるホームヘルプサービスの適用関係をめぐって生じている制度の谷間の問題(適用関係問題と呼ぶ)に照準し、その実態がいかなるものであるのかを事例分析と統計分析の方法によって明らかにするものである。 平成25年度は上記の問題にかんする事例研究をおこなった。第1に65歳以上の「障害者」はいかなる介護サービスをどのように利用しているかということを本人へのインタビューを中心に調査した。東京都内の特別区と市部に居住する障害者への調査では、障害福祉サービスと介護保険サービスの併用が、従来通り利用可能となっている事例がある一方、介護保険サービスの優先利用が求められている事例があった。そうした事態を受けて、障害者総合支援法における地域生活支援事業ならびに自治体の独自政策として制度の谷間を埋める新たな介護サービスを実施している自治体が見られた。 また、第2に65歳未満で介護保険の第2号被保険者であり特定疾病に該当する要介護者がどのような制度利用に至っているかを、本人とその家族へのインタビュー調査ならびに参与観察調査によって明らかにした。こうした状態にある要介護者の多くが介護保険の優先利用を求められ、それを超えた障害福祉サービスの利用は制限されている事例が多数見られた。脳血管障害によって四肢麻痺となった50代女性は、1日24時間にわたる介護が必要であるにもかからず、介護保険のみの利用(1日4時間程度)しか認められず、家族に大きな経済的・身体的・精神的な負担が重なっていた。そのため、在宅での生活を継続することができず施設入所を余儀なくされていた。以上のように、在宅での介護サービスにはまだまだ制度的な不備があり、公的な介護保障の実現には道半ばである事実が明らかになった。 こうした事例調査で示された個別的な実態をもとに、平成26年度は広域的な統計調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の課題として掲げた、障害福祉サービスと介護保険サービスの適用関係をめぐる事例研究を実施することができた。とりわけ自治体の裁量によって支給量が大幅に異なるという構造的な問題を把握し、制度的な問題性を指摘した。また、制度利用者の個別具体的な生活実態や家族の意識の変化を調査することができた。介護サービスの適用関係問題は、これまで社会的に認知されておらず、以上のような構造的問題と利用者の実態を明らかにすることができたことは大きな成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はおもに適用問題をめぐる大規模な質問紙調査を実施する。昨年度の調査から明らかになった通り、介護サービスの支給量は実施自治体の財政構造によって大きな差があり、全国一律の同じ制度であっても利用実態は地域ごとに異なっている。そうした問題意識を背景として全国的な統計データを収集する。そのさい、要介護者本人に質問紙を郵送することは困難であるため、介護サービス事業者や実施主体の担当部局に質問紙を送る予定である。今年度は供給者サイドから見た適用関係問題を調査し、現代の介護保障の全体像を把握する。以上の調査結果を踏まえ、適切な介護サービスのあり方を検討し、真の意味で「介護保障」となるような介護制度のあるべき姿を考察する。
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