本研究は、第二次世界大戦以後(1945年以後)に発生した国際武力紛争が「いつ」(終結時点)、「どのように」(終結要因)終結するかを国際法学の観点から実証的に検討し、現代国際法における終戦理論を確立しようとするものである。戦後の国家実行は、休戦協定によって国際武力紛争が終結するとの認識を示している。しかし、従来の国際法学において、休戦は、文字通り「戦闘の(一時的)休止」にとどまり、戦争を終結させる機能を有しないものとされてきた。本研究では、休戦協定に関する国家実行および法的認識に関する資料分析を基に、現代国際法においては、休戦協定によって国際武力紛争が終結するとの理論を実証することを試みた。 2014年度は、前年度に引き続き、休戦協定や休戦交渉に関する資料・学説の海外調査を行うことによって、個別具体的な休戦協定の機能に関する当事国や国連の認識を解明した。2014年7月には、スイス・ジュネーヴで実施されていた「国連国際法委員会」における「武力紛争に関係する環境保護」の審議を傍聴し、同委員会における武力紛争の概念や紛争終結時点に関する法的認識を確認した。また、2014年12月には、アメリカ・ニューヨークの「国連公文書館」において、コンゴ紛争に際して派遣された国連平和維持活動である国連コンゴ軍(ONUC)に関する機密資料を収集した。これら調査において、国際武力紛争の終結における休戦協定の機能の重要性が確認された。 こうして得られた成果を基にして、2014年度は、国連憲章体制の下で休戦協定は単なる「戦闘の(一時的)休止」ではなく、休戦協定締結後の武力行使を禁止する武力行使禁止原則(不可侵条約)としての機能を果たし、国際武力紛争は休戦協定によって終結するとの理論的根拠を示した博士論文「現代国際法における国際武力紛争終結の法理」を上智大学に提出し、博士(法学)の学位を取得した。
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