本研究の目的は、ゼロ金利制約下における非伝統的金融政策の効果を分析することである。先進国の主要中央銀行は、近年、金利操作によらない「非伝統的」な金融政策(特に、経済主体の「期待」に働きかけて緩和効果を得ようとする政策)を運営しているため、それらの政策の効果分析に関心が高まっている。しかし、非伝統的金融政策の効果分析は、発展途上である。その理由は、非伝統的金融政策が、民間経済主体の期待形成に働きかけることを狙った政策であり、研究遂行に際し、観察不可能な「期待」を扱うため、分析が難しいからである。本研究では、期待に関するサーベイデータ、及び金融商品の価格に織り込まれた情報を期待形成の代理指標とし、「非伝統的金融政策が、期待への働き掛けを通して、家計や金融市場に与えた影響」を分析することを目的としている。 平成25年度は、研究遂行に必要なデータを購入し、2000年代の日本銀行による非伝統的金融政策の政策効果分析を行った。具体的には、米国の金融政策に関する先行研究に従い、金利先物(ユーロ円金先)の時系列データを活用することで、非伝統的金融政策ショックの識別を行い、このショックが資産価格に与える影響を分析した。研究結果からは、当時の日本銀行によって採用された、期待に働きかけて緩和効果を得ようとする政策は、資産価格に対し、一定の効果を持っていたことが示唆された。 なお本研究成果は、2013年度日本経済学会秋季大会にて報告済みである。
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