自己が遂行した行為は、他者の行為を観察した場合に比べて記憶成績がいいことが先行研究から明らかになっている。この実演効果をコンピュータ上で行為するアバタにもあてはめ、自己を投影されたアバタの行為はそうでないアバタの行為と比較して記憶成績がいいという仮説を立てることができる。 この仮説を元に、コンピュータ上で行為を実行するアバタを用いて、アバタに自己を投影させるメカニズムについて検討した。 用いた条件は1.実験者によって割り振られた「自己アバタ」と「他者アバタ」の行為を観察する、2.参加者によって選ばれた「自己アバタ」と「他者アバタ」の行為を観察する、3.実験者によって割り振られた「自己アバタ」の行為は参加者がボタンを押すことで実行し、「他者アバタ」の行為は観察する、4.実験者によって割り振られた「自己アバタ」は参加者がボタンを押すたびにジャンプをすることによって「自己感」を体験してから、「自己アバタ」と「他者アバタ」の行為を観察する、といった全4条件であった。その結果、条件3において、参加者がボタンを押すことで「自己アバタ」の行為のスタートをコントロールできた場合のみ、実演効果が見られた。つまり、行為の内容(手を挙げる、ひざをさするなど)をコントロールせずとも、行為のスタートをコントロールするのみでそのアバタに対し「自己」を投影させることができることが明らかになった。
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