本研究では、笑顔と怒り顔では笑顔のほうが記憶に残りやすいという先行研究に基づき、86名の大学生に笑顔と怒り顔を記憶してもらい、後に真顔で呈示されたそれらの顔を再認してもらう実験を行った。参加者の社会不安の程度を質問紙で図り、人と関わるときに感じる不安の程度が顔記憶に及ぼす影響も調べた。結果、社会不安が高い人達の間では怒り顔の再認率が笑顔の再認率より低かったが、低群では両表情の再認率に差はなかった。社会不安の高い人達は脅威を与える刺激に敏感で、怒り顔の表情の分析に注意力を注いだために、個人を特定するために必要な顔の普遍的な特徴を十分に分析できず、怒り顔の再認率が低下したと考えられる。
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