本研究は、日本における予防接種のあり方を歴史社会学的に検証し、それが時代によって帯びていた意味合いと政治性とを明らかにすべく、研究計画(交付申請書作成時)の段階で、4つの具体的な課題(達成目標)を掲げていた。最終年度となる本年度(平成26年度)は、このうち、以下3つの課題(交付申請書ではそれぞれ「課題Ⅰ」「課題Ⅲ」「課題Ⅳ」)について取り組んだ。 課題Ⅰ(近世後期における天然痘の流行とその対処法の解明)に関しては、前年度に一通りの成果を出していたが、今年度におこなった国内調査により、藩政と感染症対策という観点からみて重要な事例が新たに見つかったため、あらためて資料の収集・読解・分析をおこない、成果を論文にまとめた。 課題Ⅲ(明治期から戦後にかけての種痘の実施状況の解明)に関しては、前年度の予備調査の結果、当初の計画よりも進捗に時間がかかることが予想されたため、今後、これを別途独立した研究課題として構想することとし、本年度は限定的に資料の収集・読解などの基礎的な作業をつづけた。 課題Ⅳ(天然痘の自然界からの根絶(1980年)前後における種痘に関する議論の全容解明と、それが現代の予防接種制度におよぼした影響の析出)に関しては、資料の収集と並行して、リスクに関連する理論研究を多く参照し、資料を読解・分析する視角の構築に取り組んだ。
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