前年度の研究成果をもとに、生活福祉資金貸付制度における、不動産担保型生活資金貸付事業・要保護世帯向け不動産担保型生活資金貸付事業の現状を確認するため、全国47の都道府県社会福祉協議会(以下、社協)に対し、調査票を郵便で送付した。結果47都道府県中33都道府県から郵便または電子メールで調査票を回収した(回収率70.2%)。調査票では2002年度から2013年度年度までの貸付総件数を確認し、結果、2012年度までの全国の貸付総件のうち、不動産担保型生活資金貸付で70.8%、要保護世帯向け不動産担保型生活資金貸件については77.7%の債権の現状が確認できた。またアンケートを踏まえて、リバースモーゲージ貸付に加えていくつか特徴的な支援を併用している社協を訪問し補充的に聞き取り調査した。 調査や関連資料の検討によって、主に以下の点が明らかになった。①貸付は不動産価値の高い都市部に集中している。②一般の不動産担保型生活資金貸付よりも要保護世帯向け貸付の方が、貸付契約中件数のうちの貸付停止件数割合、および貸付契約終了件数中の償還未了債権割合が高く、債権管理に不安が残る内容となっている。③両貸付制度ともに、相続人返済による完済件数が、不動産売却による完済件数に匹敵するほど多い。④借手の状況を継続的に把握し必要に応じて地域包括支援センター等の他機関と連携して支援するなど、貸付に加えて生活支援も展開する社協が複数存在している。⑤要保護世帯向け制度については生活保護給付の代替策として設計されていることもあり、福祉事務所と連携が十分にとれていない地域が存在する。 またこうした調査結果も踏まえて、福祉政策における給付型支援と貸付型支援を対比し、前者をフローの生活保障に適した形式、後者をストックの生活保障に適した形式として評価し、貸付型支援をフローの生活保障として利用することの問題点も指摘した。
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