研究課題/領域番号 |
25885106
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
濱谷 佳奈 大阪樟蔭女子大学, 児童学部, 講師 (60613073)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 道徳教育 / 宗教教育 / 倫理科 / 宗教科 / ドイツ / 国際情報交換 / イスラーム / キリスト教 |
研究概要 |
本研究は、現代ドイツの初等・中等教育段階の道徳教育改革において、カリキュラム内容、授業実践、教師教育をめぐって倫理科と宗教科とがどのような関係にあるのかを実証的に解明することを目的としている。この目的を達成するため、初年度にあたる平成25年度は、改革を進めるベルリン、ブランデンブルク、ノルトライン・ヴェストファーレン州(以下、NRW州)の3州を中心に、文献資料に基づく予備調査を行った上で、2月に現地調査を行った。 まず、予備調査では、倫理科と宗教科の法的地位に関する資料収集と分析を行った。その結果、第一に、イスラームの宗教科を正規の教科として導入し、宗教教育制度の根本的な変革を図ろうとするNRW州の試みが明らかになった。第二に、ベルリンにおいて、宗教科ではなく倫理科を逆に必修教科として導入するに至った経緯が解明された。これらの成果の一部を、イスラームの宗教科をめぐる改革状況に関する学会発表(2013年8月)及び論文「ドイツ連邦共和国における倫理科と宗教科の法的地位の関係をめぐる動向―ベルリンを事例にして―」(2014年1月)により公表した。 次に、現地調査では、学校での授業観察と教員インタビュー調査並びにベルリン自由大学・フンボルト大学・ポツダム大学・ボン大学の倫理科・宗教科教員養成課程、現職研修に関わる州政府教員研修所、宗教団体、教科書出版社の各機関の関係者へのインタビュー調査を実施した。その結果、教員養成課程及び州政府教員研修所において、倫理科と宗教科との教科間を連携させる教育内容及び教育方法が開発されつつあることが明らかになった。以上の調査結果について分析を進めており、結果を公表する予定である。また、平成26年度に予定しているNRW州での現地調査のため、ドイツ側の研究協力者と内容に関して協議を行った。実証的研究を効果的に進めるため、現在、調査項目の精選を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づきベルリンについて予備調査と現地調査を実施した。加えて、倫理科と宗教科の教員養成課程及び現職研修に携わるドイツ側研究協力者の協力により、道徳教育の先駆的取り組みを示すブランデンブルク、ノルトライン・ヴェストファーレン州についても研究実施計画に記載した以上の調査及び予備調査を進めることができた。こうして、複数州の事例を多次元において比較検討するという手法を重視する本研究にとって、より多層的な分析に取り組むことが可能となり、研究初年度としての一定の成果が得られたと考える。 一方、実践哲学科教科書の翻訳について、著作権者であるボン大学R.ヘンケ博士及びドイツ側出版社より全面的な協力を得ることが可能となった。日本の道徳教育の実践および教師教育に資する報告書ないし資料集の作成を成果目標の一つに掲げる本研究にとって、予想以上の研究協力体制が整いつつある中、研究期間中にどこまでの成果を公表するべきか、研究協力者との協議を重ねながら検討を進めたい。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画の通り、平成26年度においては、道徳教育の改革動向が好対照を示す2州に関し、比較調査を継続する。ただし、最終的に比較分析の対象とする州をどこに限定するかについては、前年度の研究成果を含めた研究内容の総合的検証及び現地調査に関わる予算面での制約に基づき判断する必要がある。この点については、ドイツ側研究協力者及び学会発表における他領域の研究者から、学術的助言を得ながら、検討していく。また、下半期には、学会発表に基づいて論文投稿を行うとともに、調査成果と資料分析のすべてを反映した最終報告書を作成する。
|