本研究は、現代ドイツの初等・中等教育段階の道徳教育改革において、カリキュラム内容、授業実践、教師教育をめぐって倫理科と宗教科とがどのような関係にあるのかを実証的に解明することを目的とする。 この目的を達成するため、平成26年度は、改革を進めるノルトライン・ヴェストファーレン州を中心とした現地調査および文献研究を継続するとともに、前年度の研究成果を公表した。 具体的には、ボン教師教育センターでの教師教育ゼミナール授業観察とインタビュー調査を行った上で、初等・中等教育段階の学校における授業観察と学校関係者へのインタビュー調査を実施した。その結果、ドイツの道徳教育改革において、児童生徒が獲得すべきコンピテンシーが明確化され、そうしたコンピテンシー獲得に向けて、教育方法上の学習プロセスと評価方法、それに伴う教員養成のあり方が再構築されつつある点が明らかになった。 以上の研究成果は、道徳教育に関する国際比較研究(日本カリキュラム学会年次大会)および研究発表(日本比較教育学会年次大会等)、論文「新たな次元に入った現代ドイツの公立学校における宗教教育―ノルトライン・ヴェストファーレン州における正規の教科としてのイスラームの宗教科の導入を中心に―」(日本カトリック教育学会)として公表した。今後、日本の道徳教育及びその教師教育に資するため、実践哲学科教科書の翻訳を刊行する計画であり、日独の研究協力者による協力体制のもと、出版準備を進めている。
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