研究実績の概要 |
本研究は説明的文章の読解スパイラルカリキュラムを構築することを目指し、平成26年度には次のような研究を進めた。 1)論理的認識力の下位能力に関する概念規定を完成させた。論証能力に関するこれまでの概念規定ではカバーされていなかった認識の限界を克服するための能力をも射程に入れ、必須の下位能力を明らかにした。それは、①論理構築能力、②意味内容形成能力、③コンテクスト分析能力であり、これらが往還的・相互補完的に機能した時、主体が認識を再構成していく様相を実践的に明らかにした。 2)スパイラルカリキュラムを長年、運用している、アメリカ合衆国およびカナダのスタンダードカリキュラムの検討をとおして、目標群がどのように構造化されているのかを検討し、Strand構成のあり方について考察した。どちらの国のカリキュラムも、読解能力を総合的な能力とみて、必須の下位能力をスパイラルに高めていく仕組みをもっていること(下位能力群を分類し、配列してStrandを構成し、有機的に関係づけていること)が明らかになった。 3)小学校国語科教科書を検討して下位能力の系統を明らかにした。具体的には、日本の小学校国語科教科書所収の説明的文章読解教材は、論理的認識力からみて、マクロ構造には因果関係(原因―結果、根拠―主張)に関する能力の系統が見られ、メゾ・ミクロ構造には基本的な結束性(順序,類別,比較,因果関係,抽象―具体,全体―部分)に関する能力の系統が見られることを明らかにした。 4)カナダの教師および授業を分析し「授業づくり」に対してカリキュラム作成上、配慮すべきことを明らかにした。カリキュラム作成の哲学を明示すること、教師の主体性を保障するためにあまり詳細にまで踏み込まないことの重要性を指摘した。 そして、1)~4)の研究成果をもとに、小学校国語科における説明的文章読解のためのスパイラルカリキュラム案を作成した。
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