平成26年度においては、2005年に行われたUSエアとアメリカウエストの合併、そして2008年に行われたデルタ航空とノースウエスト航空の合併に焦点を当て、合併前後の合併企業とライバル企業の運賃設定行動の変化について分析を行っている。平成25年度の研究と大きく異なることは、分析手法をより経済理論に近いものにした点、そして合併企業のライバルとして、USエアとアメリカウエストの合併のケースでは低費用航空会社(以下、LCC)であるサウスウエスト航空、そして、デルタ航空とノースウエスト航空の合併では、デルタ航空のライバルとして、LCCのエアトランの運賃設定行動の変化に焦点をあて分析を行った点である。サウスウエスト航空については、これまでのLCCのビジネスモデルの基を築いた世界を代表するLCCの1社と考えられてきた。しかし、他のLCCとはネットワークの規模が異なり、行動が異なる可能性があるため、今回の分析において焦点をあてる。 今回の分析の貢献には次のようなものがある。第一に合併の効果について、FSCとLCCが合併し経営の効率化を実現した場合であっても、LCCのように低運賃を設定せず運賃上昇をもたらす可能性を示した点である。第二に、長期的な分析を行う必要性を示した点である。USエアについては、合併直後から数年経過したほうがより高い水準の運賃を設定したことを示し、この行動が合併により実施された可能性が示唆される。第三にサウスウエスト航空と他のLCCの合併発生直後の行動の違いを示唆した点である。このことは今後、サウスウエスト航空の行動を分析する際、従来型のLCCとは別に考える必要があることを示している。一方、エアトランの場合は、他のLCCと合併前後の運賃設定行動に変化は見られなかった。このことは、サウスウエスト航空と他のLCCとの戦略の違いを示唆するものであると考えられる。
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