研究課題/領域番号 |
25885115
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
吉野 直人 松山大学, 経営学部, 講師 (20710479)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 経営管理 / 高信頼性組織 / 組織ルーティン / 遂行的性質 / ヒューマン・エラー / 組織事故 |
研究概要 |
本研究の目的は,組織ルーティンの遂行的性質という理論的視座のもと,高信頼性組織で生じるエラーや事故を未然に防ぐ管理実践のあり方を理論的・経験的に検討することにある。この目的に照らして,本年度は以下の3点に注力して研究を進めた。 第1に,高信頼性組織研究における組織ルーティン概念の位置づけを明らかにするための文献レビューである。結果,先行研究は同概念を集団の反復的な行動パターンと誤解しており,ルールや標準手続としての組織ルーティンが多様な仕事実践を生み出す点(組織ルーティンの遂行的性質)を看過していることがわかった。ただし,研究過程で「HRM(High Reliability Management)」と呼ばれる分野についての助言を得たため,現在でも対象範囲を拡げてレビューを継続している。 第2に,これまでの研究成果を査読論文にまとめたことである。研究代表者は以前から航空機整備現場のフィールドワークを通じて,整備マニュアルが形作る多様な仕事実践を組織化するマネジメントのあり方を検討してきた。これは現場で生じるエラーや事故を未然に防ぐ管理実践に位置づけられるものである。本年度はその成果を査読論文としてまとめて公刊にするに至った(研究発表欄を参照)。 第3に,組織ルーティンの遂行的性質という視座から現場の仕事実践を捉えるための経験的調査である。航空機整備現場の調査では管理実践に焦点を合わせていたため,必ずしも現場の多様な仕事実践を記述し,現場で生じるエラーや事故との関連性を綿密に検討できていたわけではない。よって本年度は,この点に着眼してフィールドワークの準備を進めてきた。だが,調査協力先の諸事情により調査実施が難しくなったため,現在はペンディングの状態にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では,本年度は1.高信頼組織研究の文献レビュー,2.フィールドワークの予備的調査を実施する予定であった。1に関しては,研究助言を受けてレビューの対象範囲を拡げたため成果発表には至っていないが,作業自体はおおむね順調に進展している。2に関しては,調査が難航していることから進捗が遅れているといわざるを得ないが,この点に関しては,すでに別のリサーチ・サイト(航空・鉄道業界に属する企業)へ調査協力の打診をしており対策済みである。またこれらの計画以外に,本年度はこれまでの研究を査読論文として成果を公表した点を踏まえ,「おおむね順調に進展している」と自己判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として以下の3点を予定している。 第1に,高信頼性組織研究の文献レビューである。本年度の研究成果にHRM研究のレビューを追加し,高信頼性組織を実現する現場のマネジメントのあり方を整理するとともに,高信頼性組織研究における組織ルーティン概念の位置づけを明らかにする。成果は,松山大学論集(本学紀要)もしくはその他の学術刊行物で公表する予定である。 第2に,組織ルーティンの遂行的性質という視座から現場の仕事実践を捉えるための経験的調査である。上述のように,すでに別のリサーチ・サイトに調査協力を打診していることから,引き続き交渉を進めて実現したい。 第3に,ハーバート・サイモンの学説に関する理論研究である。これは当初の計画にない研究だが,これまでの成果を踏まえ,遂行的性質を孕む組織成員の仕事実践を組織化する管理実践を検討するには,組織ルーティン研究の嚆矢となったサイモンの理論体系や彼のデザインサイエンスと呼ばれる科学観に遡って検討する必要性が認められた。また,フィールドワークを実施できなかった場合のリスクヘッジが必要になることも踏まえ,研究計画を変更してサイモン学説に関する理論研究を追加する。
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