本研究は幼児向け科学実験遊びの研究開発と実践、保育者への普及をねらいとした。初年度では、幼児にとって科学実験遊びは遊びになり得るとの結論を得た。最終年度では、保育現場で汎用性の高いプログラムを制作し、プログラムは研修を通じて保育者への普及を図った。 【遊びの枠組みの中で科学実験遊びを行う意味】幼児向け科学実験の意味は、子どもたちが科学的知識を獲得することではなく、遊びの中で、物質との出会い、科学的現象との出会いから新しい世界・未知の領域に触れることで遊び体験を豊かにすることである。実践では、科学的論理として、公式化された科学を身の回りの事象に照らし合わせ検証を行うことは幼児には難しいが、実験環境に接近した出来事において、幼児は仮説検証を行う事例が見られた。幼児が自生的な理論を構成していると考えられ、公式の科学を獲得するためのエピソードを蓄えている体験であり、遊びとして実践し、学びへとつながる流れをつくることができると手応えを得た。本研究で選定した内容は、保育者、保護者にとっても驚きのある内容となり、大人が子どもと同じ目線で驚きを共有する姿が見て取れた。子どもの心の動きと「共振」することで、知識獲得を目的としない緩やかな心地よい遊びの空間が生まれたと感じている。 【保育現場で汎用性の高いプログラム】研修前の保育者対象ヒアリングから、興味があるが、自身が苦手な為、実践のハードルが高い等のネガティブな印象が顕在化された。そこで、ネガティブな条件に当てはまらない科学実験遊びをプログラム化し研修内容として普及を図った。条件は、事前準備や説明が容易、危険でない身近な材料、幼児が実際に手に取り遊びとして楽しめることとした。 【プログラムの普及】研修会4回、保育者向けに実施し普及を図った。研修会後のアンケート、受講者の現場での実践報告を受け、問題点等を顕在化させた。今後も継続し、普及を行う。
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