平成26年度は、前年度に引き続いて調査を実施し、成果発表につなげられるようデータの分析とまとめを行った。データの分析については、ソーシャル・キャピタルの枠組みにもとづいて行い、貧困状態の保護者と子どもの有するソーシャル・キャピタルの様相について明らかにした。それらを踏まえて、貧困層・生活不安定層の家庭への支援コミュニティづくりの方策について検討を進めた。 具体的には、前年度の調査対象校および新たに追加した調査対象校においてフィールドワークを実施した。フィールドワークでは、学校の行事や普段の授業、学校と地域の連携に関する活動、地域主体で行われる活動について参与観察を行った。また、それぞれの学校において、保護者、地域住民、教職員、民生委員等福祉関係者、行政関係者へのインタビューを実施した。子どもに対するインタビューも行った。中学生に対してはインタビューを実施し、小学生に対しては授業観察の際に発した言葉や休み時間において会話をする中で意をくみ取るようにした。フィールドワークの記録およびインタビュー内容については全てデータ化し、分析できるように文字媒体で記録を残した。これらについて分析を行い、公表できる準備を整えてきた。なお、貧困状態である家庭の調査内容については、個人情報の保護や倫理面での配慮が必要であり、それらについては、調査対象校の教員の許可を得て細心の注意を払いつつ公表するための準備を行った。 本研究の意義は、まず、最近取りざたされている子どもの貧困問題に対して子どもの生活基盤である地域に着目してアプローチするところにある。また、教育と福祉の接続を模索する点にある。研究成果はこうした意義を踏まえてまとめており、子どもの貧困問題に対応可能なコミュニティの構築条件を提示する本研究は近年の動向に鑑みても重要なものであると考えられる。
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