本年度は、前年度の研究成果を受け、次の4点から研究を実施した。 第一に、国際人権基準、指導原則およびCSRに関して、引き続き最新動向を研究することである。本年度は予算の関係で第3回国連人権理事会「ビジネスと人権フォーラム」に参加することができなかったため、フォーラムでの成果文書をはじめとする国連文書や文献・資料研究を通じて分析を行った。加えて人権条約実施機関やEUなどの地域機関の動向についても研究を行った。これらの研究成果を学会で報告し、今後ふたつの学術論文として発表する予定である。 第二に、権利保有者の視点および中小企業の視点からの国際人権基準の実施である。子ども(児童労働)、障がい者、紛争影響地域の3課題に関する国際人権基準の企業による実現について、各分野の専門家を招き公開セミナーを実施した。なお障がい者の人権をテーマにしたセミナーでは専門家だけでなく、大企業および中小企業の担当者が登壇し、取組みを共有した。成果物として、当該3分野の国際人権基準を実現するためのガイドを作成した。研究成果を発表するウェブサイトを通じて、成果を共有する。 第三に、企業の国外事業展開先である韓国およびインドにおける国際人権基準の実現である。インドへは2015年2月10-19日に現地調査(NMIMS経営大学院ガリアラ教授やタタ社会科学研究所へのインタビュー等)を行い、また韓国へは2015年3月19-20日に出張し2年間の共同研究の総括研究会を行った。インドでの現地調査報告はウェブを通じて、韓国との共同調査の成果は学術論文としてまとめる予定である。 第四に、ウェブによる研究成果の公表である。英語版での情報発信は予算の関係で実現できなかったが、2014年秋に中間発表を行い、最終成果の公表は2015年夏の完成を目指している。
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