研究課題/領域番号 |
25886006
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
眞下 泰正 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (20707400)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | ハイスループット細胞培養デバイス / マイクロ流体デバイス / ナノファイバー / ハイスループット細胞表現型解析 |
研究概要 |
本研究課題では、マイクロ流体デバイス(mFD)、及びiPS細胞を駆使して、①細胞外環境ストレスにより発症する疾患モデルの創出およびハイスループット細胞アッセイ系の開発を行い、②細胞外環境ストレスによるアルツハイマー病(AD)発症・進行機構の解明を目的とする。本目的達成のために以下の実施計画に沿って研究を進める。 A. 細胞外環境ストレスを制御できるmFDの開発。 B. ハイスループットなADモデル表現型解析法の開発。 C. 開発したmFDによる細胞外環境ストレス負荷ADモデルの作製・評価、および多角的な分子生物学的解析を通したADモデル細胞における低酸素ストレスの作用機構解明。 前年度は、ハイスループットな細胞表現型解析のために必要となる細胞培養デバイス(①、②)及び解析法(③)の開発に成功した。具体的には、次の3項目を達成した。① 48個のマイクロ流路(単一流路につき2ウェル)を有するプレート(HT-mFD)を、3Dプリンタを活用して作製した。3Dプリンタの活用により、簡便にマイクロ流体デバイスを作製することが可能となった他、この細胞培養デバイスは、通常の96ウェル細胞培養プレートと同様のシステムを用いた実験自動化が可能である。② HT-mFDの各流路にナノファイバーを有するナノファイバースクリーニングデバイスを開発した。ナノファイバーを組み込むことにより、各流路において、3次元培養が可能となる。さらに、ナノファイバーは、表面を様々な生体分子で修飾した細胞機能制御を目的とした細胞外マトリクスとしても活用可能であり、ADの原因となる細胞外環境構築に応用できる。③ ナノファイバースクリーニングデバイス上で、ナノファイバーを細胞外マトリクスとして利用したiPS細胞培養に成功し、さらに、デバイス上で、4種類の細胞表現型を、単一細胞レベルで、定量解析する手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞外マトリクスに起因する細胞外環境ストレスを試験管内で再現するために、自在に表面構造や表面修飾分子を制御可能なナノファイバーを用いた細胞外マトリクスに着目し、これをハイスループットなマイクロ流体デバイスと組み合わせた。これにより、研究実施項目Aの「細胞外環境ストレスを制御できるµFDの開発」の基盤技術が完成した。 さらに、HT-µFD上で細胞培養を行い、さらにデバイス上で複数の細胞表現型を定量的に同時解析する技術を開発したことにより、研究実施項目Bの「ハイスループットなADモデル表現型解析法の開発」を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の成果(①~③)を基盤技術として、以下の研究実施項目を達成する。 ④ ナノファイバーに細胞外環境ストレスの原因とされる生体因子を修飾することにより、細胞外環境ストレスを惹起できる細胞外マトリクスを作製し、これを組み込んだ細胞培養デバイス(細胞外環境ストレスを制御できるmFD)を開発する。 ⑤ ④で開発したデバイスを用い、細胞外環境ストレス負荷ADモデルの作製・評価を行う。さらに、ハイスループット解析により表現型に顕著な変化が見られた場合、多角的な分子生物学的解析を行う。 ④、⑤の計画が達成されれば、申請者らが開発したハイスループットな細胞培養法・細胞表現型解析法が、細胞外環境ストレス負荷により発症する疾病の病態形成解析に有効であることが示される。これにより、同様のメカニズムにより発症する様々な疾病の病態形成メカニズム解明や、これらの疾病を治療するための薬剤スクリーニング等に、申請者らが開発した技術を応用できることが示される。
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