研究課題/領域番号 |
25887001
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
草原 和弥 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (20707020)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 南極棚氷 / 棚氷-海氷-海洋モデル / 棚氷底面融解 / 気候変動 |
研究概要 |
近年の地球温暖化に伴って、南極及び北極の両極の雪氷圏に大きな環境変化が現れはじめている。特に、南極氷床の加速度的な海洋への流出が危惧されており、その主たる原因は海洋と氷床の相互作用であると言われている。氷床の質量損失は海面水位上昇を引き起こすことから、科学的にだけではなく、社会的にも関心が高いテーマである。また、氷床を起源とする融解水は南大洋を淡水化させ、海洋深層大循環を弱化させうることからも、その振る舞いを理解する必要がある。本研究では、最新の棚氷―海氷―海洋結合モデルを用いて、南極氷床/棚氷―海洋間の相互作用及び棚氷融解水が海氷や海洋場に与える影響を明らかにすることを目的する。 25年度研究では、具体的なターゲット海域として、東南極のアデリー沖を選んだ。水平解像度を数kmと高解像度の領域モデルを作成し、アデリー沖における棚氷底面融解プロセスに関して数値モデリングを実施した。 ECMWFの再解析データから作成した経年変動する海面境界条件を用いて1979年から2012年の34年間の数値モデルの積分を実施した。アデリー沖の環境を特徴付けるメルツ氷河舌(棚氷)での底面融解量を見積もると年間16Gt程度であることがわかった。底面融解量の季節変動を調べると、夏季(1月)に最大となり、冬季(9-11月)に最小となっていた。経年変動成分を調べると、メルツ氷河舌の底面融解量は南大洋の大気のインデックスである環状モード(Southern Annular Mode) と強い相関関係にあることが明かになった。 本研究に関連して、南極沿岸域を10-20kmで覆ったモデルを用いた棚氷融解水の振る舞いに関する投稿論文を国際誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・数値モデルは順調に数値積分することができている。 ・モデル出力のデータ解析も着実に進めている。 ・関連するテーマに関して学会発表することができた。 ・南極沿岸の棚氷―海氷―海洋相互作用に関する研究論文の国際誌への投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
数値モデルを実行しつつ、南極沿岸域の棚氷-海氷-海洋相互作用の解明に向けて研究を進めていきたい。これまで、領域モデルを使った数値実験を実施してきた中で、人工境界の影響が少しあることがわかってきた。具体的には、南極周極流が東の壁にぶつかり、人工境界で南へ向きをかえる。さらにその南下流が南極沿岸において、西に転向する。この流れに沿って、南極周極流起源の暖かい水が沿岸域に運ばれ、海氷場を崩壊しやすい状況を形成している。次のステップとして、ターゲット領域(アデリー沖)を局所的に高解像度化した全球のモデルをセットアップし、この問題を回避したい。 今後は(研究計画に沿って)以下の点に着目しながら研究をすすめる。 1) 氷河舌底面融解量の原因となる熱源の特定 2) 氷河/棚氷底面融解水が高密度水に与える影響 3) 崩壊後(2010年2月~)の残留メルツ氷河舌での底面融解とその海氷・海洋場への影響の解明
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