本年度は、リーマンゼータ関数のオイラー積の絶対収束域外での挙動について、Perronの公式を用いた手法により考察を行った。これは、以前に本研究が得ていたオイラー積の挙動を、別の観点から再考察を行うものである。今年度の考察の結果、オイラー積のより精緻な漸近挙動を得ることが出来た。具体的には、以前の研究で誤差項として処理していた部分を、リーマンゼータ関数の零点を用いてより明示的に表すことができた。また、以前の研究では、鍵となる明示公式は零点分布に関する条件付きの結果であったが、今回の零点の寄与を込めた明示公式は無条件に成立するものとなっている。また、零点の寄与は絶対収束する零点を走る和になっており、解析的に取り扱いやすいものである。 上記内容と密接に関係するテーマとして、ある約数関数についても研究を行った。これは、Ramanujanが1915年頃に研究を行い、一部は出版されたものの、残りの部分は1980年代まで未公開となっていたものである。今年度の研究により、Ramanujanの議論の飛躍していると思われる部分を埋め、ある約数関数の上極限に関するRamanujanの結果を再構成することができた。この研究の鍵の一つは最初に述べたオイラー積の絶対収束域外での挙動であり、オイラー積の挙動の応用例を得ることが出来た。 当初予定していた、オイラー積の挙動の虚部変数に関する一様評価についてはまとまった結果を得ることができなかった。また、数値計算についてもオイラー積を素数が10の10乗以下まで計算してみたものの、新しい発見には至らなかった。
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