申請者は米国国立高磁場研究所(National High Magnetic Field Laboratory)にて重い電子系化合物 a-YbAlB4 に対して最大31 Tという高磁場下、極低温、圧力下といった超極限環境下での磁気抵抗測定を行った。その結果、磁気抵抗に見られる振動(シュブニコフドハース振動)を観測した。特に 25 Tにおいて、その振動の周波数が変化することを発見した。一方で磁化などのバルクの物理量では観測されておらず、フェルミ面の "隠れた" 相転移の存在を示唆する重要な成果である。 一方、その基底状態に多極子と呼ばれる軌道自由度をもち、0.6 Kで四極子秩序を示す Pr化合物 PrV2Al20 の磁気抵抗を極低温、高磁場で測定した。その結果、H//[110]において、約15Tで相転移を発見した。温度依存性などの詳細な測定から、この相転移は四極子相の崩壊に伴う相転移であることを明らかにした。我々のこれまでの研究と合わせ、主軸三方向の相図を完成させた。この結果は理論的に予測された四極子秩序相図をよく説明し、いまだ未解明な秩序変数の同定に重要な進歩をもたらした。またH//[111]において昨年度は高磁場で 0.4 Kまで測定を行っていたが、今回さらに低温の50 mKまで磁気抵抗測定を行った。そして臨界磁場11 Tにおいて、非常に強い温度依存性を見出した。これは重い電子系でしばしみられるものであるが、今回見出したものはその中でも最大級の大きさであることを明らかにした。
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