今年度は、複素可解多様体の非自明な局所系コホモロジーに関するHodge構造についての研究を行った。SimpsonのHiggs束を用いた平坦接続の分解のアイディアを用いて,局所系版のBott-Chernコホモロジーを定義し,非ケーラー複素多様体上で局所系コホモロジーのHodge理論の研究が行えるようにした.これを用いて,複素可解多様体で局所系コホモロジーのHodge分解が起こるための条件を求め,いくつかの複素可解多様体に関して具体的な計算を行った.これまで,一般の複素多様体では局所系コホモロジーのHodge理論は調べられていなかった.これらの結果によって,一般の複素多様体上での局所系Hodge理論の重要性広くをアピールすることができた. 今年度はさらに,ケーラー構造の奇数次元版である佐々木構造に関しても研究を行った.近年佐々木構造を持つような冪零多様体の分類が,Cappelletti-Montano-De Nicola-Marrero-Yudinによって与えられた.本研究では,彼らの証明を混合Hodge構造を用いて簡略化し,さらに佐々木多様体の横断的なケーラー構造から得られるコホモロジーの対称性によってCappelletti-Montano-De Nicola-Marrero-Yudinの結果を拡張し,佐々木構造を持つような可解多様体を分類することに成功した.
|