本研究の目標は,量子フィードバックを駆使して最大エンタングルド状態を安定生成・制御することである.平成25年度においては,制御の対象となる原子スピン系の準備と,原子スピン系の情報を量子非破壊的に読み取るためのプローブとして機能する光源の準備を行い,以下に示す成果を得た. まず,光源として,1112nmで発振する外部共振器付半導体レーザー(ECLD)を作成し,これを増幅することで1W以上の出力を安定的に得ることができた.原子系と相互作用させるのはこの第2高調波に相当する556nmの光であるが,第2高調波発生に用いる共振器,非線形結晶の準備を整えた.また,研究グループに既存の狭線幅共振器をリファレンスとして,ECLDの発振線幅を10kHz程度まで狭窄化した.これは,ファラデー回転相互作用を介して原子系の情報を量子非破壊的に読み取るプローブとして,十分な性能を持った光源となるだろうと期待される. 研究の計画段階では,原子系として,共振器中に捕獲した単一原子の利用を念頭においていた.一方で,光格子中の原子集団に対して超高空間分解能を持った結像系によってアクセスするシステムの開発を平行して進めていたが,この研究が予想以上の進展を見せ,またこのシステムを制御の対象として用いた方がより広範な物理にアプローチできるだろうという期待もあり,今年度はこの顕微系の開発に注力した.研究成果として,光格子中の極低温Yb原子に対して,光格子の空間周期(540nm)より十分高い空間分解能で蛍光撮像するシステムの開発に成功した.これは,Rb以外の原子種に対する撮像系としてはこれまでにない成果であり,一般の原子系への拡張における重要な一歩であると考えられる.
|