研究課題/領域番号 |
25887023
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
奥住 聡 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (60704533)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 惑星起源・進化 / 理論天文学 / 原始惑星系円盤 / 磁場 |
研究概要 |
微惑星の形成は、惑星科学における最大の未解明問題の1つである。この問題の解決のためには、微惑星形成の現場である原始惑星系円盤の乱流状態に正しく制約を与えることが必須である。本研究はの目的は、原始惑星系円盤の磁気乱流に関する最新の理論的理解に立脚し、固体と磁気乱流の共進化を統一的に理解することである。 平成25年度は、磁気乱流の強度を左右する重要な物理量である、円盤を貫く磁場の磁束量の進化について理論研究を行った。具体的には、降着円盤における平均磁場の誘導方程式を用いて、円盤磁束の時間進化およびその終局状態である定常状態を数値計算・解析計算の両面から調べた。まず数値計算の結果から、定常状態において円盤内部に維持可能な磁束の量には上限があり、上限を上回る余剰磁束は時間とともに円盤外部へと排出されることを発見した。続いて、定常状態における磁束の空間分布を表す解析解を導出し、最大磁束強度を円盤外縁半径と外部磁場強度の関数として公式化することに成功した。以上の成果によって、原始惑星系円盤のもちうる磁束強度を定量的にかつ磁束輸送の物理に立脚したかたちで議論することが可能になった。 さらに、得られた公式を現実的な原始惑星系円盤および磁気乱流モデルに対して適用した。その結果、磁気乱流によってもたらされうる定常な円盤質量降着率の最大値はおよそ0.1太陽質量/100万年であることを導いた。この本研究の結果は、観測的に知られている原始惑星系円盤の質量降着率がおおむね0.1太陽質量/100万年である事実と調和的である。 また、衛星形成の舞台である周惑星円盤における磁気乱流の形成可能性についても検討を行った。その結果、周惑星円盤で強い磁気乱流が発生する可能性は低いことを明らかにした。 以上の研究成果を3編の論文にまとめ、査読付き国際学術誌に投稿した。うち2編はすでに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究では、「大局磁束強度には上限値が存在する」という興味深い事実を突き止めた。さらに、観測で知られる原始惑星系円盤の定常質量降着率の範囲が、磁束強度の上限値からよく説明できることを発見した。このように、理論モデルの完成のみにとどまらず、観測事実との比較についてまで本年度内に成果を上げることができたことは想定外であり、当初の計画以上に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を基礎に、固体衝突進化シミュレーションに取り組む。本課題で取り扱う微惑星形成は、ミクロンサイズの塵からキロメートルkmサイズの微惑星へ至る固体の衝突成長過程である。円盤の電気伝導度を支配するのは微小な塵である。したがって、巨視的な固体の衝突破壊とそれによる微小な固体粒子の再供給を同時に取り扱う必要がある。本研究では、このような効果を正しく取り扱うため、固体衝突進化の統計シミュレーションを実施する。この手法は、固体(塵粒子の衝突成長物)の集団を実空間およびサイズ空間上の分布関数として扱い、固体の移動と衝突にともなう分布関数の時間進化を統計的にシミュレートするものである。このようにすることで、固体を個々の粒子として取り扱うような計算では成し得ない、質量にして数十桁にもわたる広いサイズ範囲での固体衝突進化の追跡が可能になる。しかしながら、多様な素過程を同時に組み込むことで、数値計算を律速する現象が現れる可能性は否定できない。この場合は、計算コードの並列化や陰的時間発展の適用など、計算コードの改良をもって対処を行う。
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