研究実績の概要 |
本研究はの目的は、原始惑星系円盤の磁気乱流に関する最新の理論的理解に立脚し、固体と磁気乱流の共進化を統一的に理解することである。 平成26年度は、前年度に行った円盤を貫く磁束の平衡分布計算(Okuzumi, Takeuchi, & Muto 2014)をさらに発展させ、ガス円盤の粘性進化まで考慮した磁束輸送の非定常計算に取り組んだ。この結果、ガスの中心星への降着による磁束の移流の時間スケールが、磁気拡散や円盤粘性進化の時間スケールを下回る場合、磁束の空間分布は平衡解でよく記述できるような分布へと収束することを明らかにした。これにより、磁気乱流の強度に大きな影響を与える円盤磁束の空間分布を、円盤形成からの時間の関数として理解することがはじめて可能になった。本研究成果をまとめた論文は査読付き国際学術誌に掲載された(Takeuchi & Okuzumi 2014)。 さらに、固体微粒子の帯電と磁気乱流による電離電子の加熱を同時に考慮した新しい円盤電離モデルを開発した。モデル計算の結果、固体微粒子が豊富に存在する円盤では、電子の加熱が起こるとプラズマが急速に固体微粒子に吸着し、その結果としてガスの電離度が低下するという新しい現象を発見した。さらに、この現象が磁気乱流の発達に対して負のフィードバックを与えることを明らかにした。またこの現象の副作用として、電子の加熱が起こると固体微粒子の負帯電量が増大し、固体微粒子の衝突合体成長がクーロン反発によって著しく妨げられるようになることを明らかにした。以上の研究成果の一部をまとめた論文1編がすでに査読付き国際学術誌において掲載されており(Okuzumi & Inutsuka 2015)、現在はさらに2編の論文の投稿準備に取り組んでいる。
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