本年度は、地球のような系外固体惑星の表層環境を点源としての測光・分光観測によってどう特徴付けるべきかという問題設定で前年度に始めた2つの研究を深めまとめることを中心に進めた。 まず、太陽系内惑星について得られている知見を系外固体惑星表層の探査の可能性に繋げるためのステップとして、前年度は主に系内天体の測光・分光特性の定量的なサーベイを中心に行ったが、今年度は、より一般的な観点で可視から近赤外の波長ごとに点源としての測光観測に表れる表面組成の特徴(海/陸の共存、火成活動・粒子サイズ・不純物・地質年代の影響など)をまとめ、その成因として外挿される地質学的性質を関係付けた。また、前年度には考慮していなかったタイタンやイアペトゥスなどの天体も考察対象に入れ、多様性の幅を広げた。 前年度に始めたもう一つの共同研究である、地球型惑星の分光学的特徴付け、特にバイオマーカーとしての非平衡な大気組成の同定における衛星の影響についてもまとめ、論文として出版した。 これらの研究は、生命の起源とアストロバイオロジーをテーマにした2件の国際学会でも発表し、国内外の研究者と議論を深めた。 年度の後半では、固体惑星の地質にも惑星のスペクトルにも重大な影響を与える大気と水の循環が惑星の大きさ・大気の厚み・自転速度・主星からの距離などの物理量によってどう変化するかを調べるため、米国のゴダード宇宙科学研究所を訪問し、彼らが開発した全球気候モデルで数値実験を行った。
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