研究概要 |
当該年度は研究開始から半年しかなかったが、この少ない期間で主に測定法の立ちあげを主に行った。硫酸の酸素・硫黄の質量非依存分別(Mass-independent fractionation, MIF)を用いて、火山噴火後の硫酸生成のメカニズム(酸化剤の特定、光化学反応(光解離、光励起等))を行う基盤が構築された。大規模火山噴火のシグナルには不明点が多く、アイスコア・火山灰・チャンバー実験などの模擬実験から、火山噴火によって放出される二酸化硫黄(SO2)が硫酸に生成する際にどのような同位体の変化が生じるかを考察することを目的とする。 硫酸の四種硫黄同位体測定に関しては、存在度の少ない36Sを高精度・高確度に測定するため、新に購入したカラムを用いてフルオロカーボン等の不純物を取り除き、国際標準試薬であるIAEA-S1, S2, S3の測定によってd34S, D33S, D36Sがすべて他の研究室と比較可能な測定ができることを確かめた。現状では5-10マイクロモルの試料を分析で十分な精度で計測が可能となった。 硫酸の三酸素同位体組成に関しては、国内初の測定法を立ちあげた。試料中の硫酸をイオンクロマトグラフを用いて他イオンから分離・回収を行い、この方法を用いて硫酸を硫酸銀として回収した。回収した溶液から硫酸銀を90度の遠心分離で固体として回収した。硫酸銀を石英カプセルに秤量し、1000度の硫酸銀粉末を熱分解することでO2を生成し、このO2の三酸素同位体組成を測定した。17Oをラベルした4試料(0‰、1.1‰、2.2‰、8.0‰)を分析した結果、その結果はワシントン大学の結果と調和的であり、結果として海外と比較可能な測定法が開発された。 次年度は立ちあげた方法を環境試料に供試し、硫酸生成過程の解明を行う。
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