当該年度は、硫酸の三酸素同位体測定法の自動測定法を自作し、その評価を行った。硫酸を他イオン(硝酸など)から分離するイオンクロマトグラフの導入部、バルブ、フラクションコレクターを自動化をを完了した。また、硫酸銀の熱分解による酸素生成、分離、導入、同位体比質量分析も自作ラインによって自動化し、20分/試料で分析できる体制を整えた。硫酸の四種硫黄同位体測定に関しては、自作のマイクロボリュームインレットを作成し、約1 umol程度の試料での分析が可能となった他、硫酸の湿式還元を多連化することで、以前よりも多数の試料が測定できるように改良した。作成した分析法を用いて、多国間(フランス・アメリカ)のキャリブレーションを行い、整合的な結果を得た。また、本年度からJSPSの二国間交流事業の支援によりLGGE/CNRS(フランス)との共同研究が開始され、大規模火山噴火後に南極に保存されたアイスコア、南極大陸で採取されたエアロゾル試料の分析、火山噴火を模擬した光化学チャンバー実験を開始するなどを包括的に研究できる体制が整った。当該年度にはいくつかの光化学チャンバーの低温実験を行い、成層圏も模擬した硫酸生成実験を行った。さらに、現時点では成果公表には至らなかっていないが、すでに南極アイスコアやエアロゾルの試料の分析がスタートしており、次年度以降に分析・解析が進む予定である。このように、研究活動のスタートアップとして一定の成果を得た。また、大規模火山噴火が存在しない時期のバックグラウンド硫酸エアロゾルの起源である硫化カルボニル(OCSもしくはCOS)の硫黄同位体測定法を開発に成功し、成果発表を行った。
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