研究課題/領域番号 |
25887027
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
住浜 水季 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (10396426)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | スズ半導体 / 相転移 / 結晶成長 |
研究概要 |
βスズ→αスズ相転移の環境条件を探った。 1.種結晶としてゲルマニウムとInSb結晶を使用し、βスズ→αスズ相転移の発生頻度を調べた。結果、αスズの格子定数と近い値であるInSb結晶の方が2倍以上効率よく相転移を引き起こすことが分った。2.温度を5℃毎に-45℃まで変化させられる簡易小型冷凍機を購入した。庫内にモニター用のカメラを設置して、30分毎に画像を保存できるようにした。相転移の発生頻度の温度依存性と経過時間依存性を調べた結果、-40℃まで温度を下げることで効率よく、短期間で相転移を起こさせることができることが分った。3.空気中と、氷圧中での変化の違いを調べた。相転移の発生頻度に大きな差は見られなかったが、空気中ではほぼ100%スズペスト(ぼろぼろに崩壊)になった。これはβ→α 相転移時に結合ボンドが切られたためと考えられる。一方、表圧中では半分以上がペストにまで至らず、塊として取り出すことができた。きれいな単結晶とまではいかないが、氷圧下ではボンド切断が抑えられていると考える。また、水の不純物依存性についても調べたが優位な結果は得られなかった。4、3の結果を受けて、室温で50気圧までかけられるガス圧力容器を製作し、アルゴンガスを封入し実験を行った。-40℃、30気圧の条件下でβ→α 相転移を発生させ、結合ボンドを切る事の無い状況を作り出して結晶成長を行い、大きなα-Sn結晶を得ることを試みた。3回、計10個のサンプルで実験を行ったが、金属結晶のボンドを切ることなく結晶を得るには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
β→α 相転移の発生条件・環境を調べ、効率よく相転移を発生させることが、初めの一歩である。まず、冷凍機・高圧ガス容器・長期間モニターといった実験装置を設置・製作したことで環境が整い、実験を効率に詳細に進めることができるようになった。種結晶・温度・圧力についての理解が深まり、結晶作成のためのよりよい実験条件が分ってきた。 相転移発生の効率を高めることで、実験を効率よく進める条件が整った。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、相転移を効率よく発生させるこができるようになったが、結晶のボンドが部分的に切られた黒色の塊、もしくはボロボロに崩壊したスズペストの状態でしか、αスズが作成できていない。β-Sn金属からα-Sn半導体への転移では結晶構造の違いにより、体積変化が伴うので、金属結晶のボンドを切ることなく結晶成長を行わせる必要がある。そのために、高圧化で種結晶から徐々に結晶成長をさせる実験を行う。温度・圧力・ガスの種類といった条件を変化させてみたり、氷圧についても、固い氷の作成など工夫を施す。また、大きい結晶の塊で作成し、αスズの結晶を取り出せないか試す。 小さい単結晶でも試す。 並行して、製作したα-Sn単結晶のダイオード特性測定を試みる。このための装置としてはオシロスコープ、抵抗コンデンサ回路、信号発生器である。温度を常温に戻すことなく-40℃の冷凍温度でなんとかダイオード特性が測定出来るような外付け電気回路製作の工夫が必要である。初めは、シリコン半導体やゲルマニウム半導体のようなはっきりしたガンマ線スペクトルを取得することは困難である。しかしながら、製作したスズ半導体がダイオード特性を示せば、ガンマ線源からのガンマ線に曝すことで、ノイズレベルが高くなるという半導体放射線測定検出器特有の信号変化が観測される。
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