α-Snへの相転移の研究を継続し、出来る限り大きなα-Sn単結晶の製作を目指した。 購入した温度調整可能な冷凍庫内での相転移の様子を観察した。氷圧下で行い、外から観測できるように透明度の高い氷を作成し、カメラを2方向から設置した。α-Snへの転移の際、種結晶の接触部分からどのように転移が進むのか、場所と速度の観点から観測を行った。結果、種結晶から相転移が開始することが観測され、相転移が開始されるまでは10時間ほどかかるが、進行ははやく1時間程度で約3x3x3cm^3のスズインゴットがすべてスズペストになることがわかった。撹拌しながら作った透明度の高い氷は不純物が取り除かれ、固い氷でありその分高い氷圧がかけらていることになるが、それでもα-Snはスズペストの状態になっていた。また、種結晶をしてα-Snを使用した場合、InSb半導体結晶を使用した場合よりも相転移発生率が高いことがわかった。このようにして作成したスズペスト状のα-Snを丁寧に見て白褐色をした単結晶を取り出すことを試みたが、取り出すことはできなかった。 以上のように相転移について研究を進めることができ、一定の成果を上げられたが、α-Snの単結晶を取り出すことには成功していない。半導体検出器に使用するためにはある程度大きいさのある単結晶を取り出す必要がある。相転移によって体積が27%増えることによって、結晶ボンドが切れペスト状になってしまうことを抑えて単結晶を作成することは非常に困難であることもわかった。 そこで、相転移を利用せず、初めから低温でα-Snの単結晶を作成することを試みることにした。特許の論文に”理論的に”作成可能な手法が掲載されていたので、この手法を今後は試していく。
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