研究課題
スズは常温常圧下で銀白色の金属のβ-Snとして安定に存在するが,低温で同素変態を起こしα-Snになる。そのα相は半導体特性をもつ。シリコンやゲルマニウム半導体はX線やガンマ線検出器として広く用いられているが,それらよりも原子番号が大きく,バンドギャップが小さいスズ半導体を用いることができればより検出効率の高い高性能のガンマ線検出器が可能となる。そこで,スズ半導体の基礎研究として,β相からα相への相転移の研究を行った。相転移の進行には,種結晶として,α-Snに格子定数の値が近いインジウムアンチモン半導体が適していること,温度は-40 ℃まで下げることで相転移の進行が早まることがわかった。また,氷圧をかけることでスズペストになることを抑制できることもわかった。さらに,相転移開始までの時間のスズ純度依存性を調べ,99%と99,9%の純度の差で相転移速度が大きく変わることもわかった。以上のように相転移について研究を進めることができ、一定の成果を上げられたが、α-Snの単結晶を取り出すことは成功していない。相転移によって体積が27%増えることによって、結晶ボンドが切れペスト状になってしまうことを抑えて単結晶を作成するのは非常に困難であることもわかった。そこで、発想を転換して、β-Snからα-Sn作成するのではなく、α-Snの単結晶を電気分解によって析出させる手法を試みることにした。摂氏0℃の硫酸スズ水溶液に,陽極としてスズを、陰極として銅を用いて行った結果,β-Sn結晶が析出された。また,摂氏-40℃で実験を行うために,エタノールを混合した塩化スズ水容器でも行い,スズ結晶を取り出すことができた。しかし,いずれもβ-Sn結晶であった。まだ,α-Snを取り出すことはできていないが,このような電気分解を利用した方法は結晶の作製には有効であると考え,電流値を小さくして試したり,種結晶の形状を工夫したりして実験を継続している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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岐阜大学 教育学部研究報告 自然科学
巻: 40 ページ: 21,25