研究実績の概要 |
天の川銀河拡散X線放射は光学的に薄い熱的プラズマのスペクトルを持ち、銀河面に沿って広がる拡散X線である。先行研究によると、その起源は、銀河中心 (|l|<2° & |b|<1°) を除くと暗いX線点源 (激変星、Active binary等)の重ね合わせが有力である。しかし、大きな輝線等価幅やプラズマ温度の場所依存性等、点源で説明が難しい点もあり、広がった高温ガス成分の存在する可能性も残る。 私は、ある立体角内に含まれる点源の数はポアソン統計に従って揺らぐことに着目した。天の川銀河拡散X線放射が点源の集まりならば、点源の強度分布(図1.2)を反映した表面輝度の空間的な揺らぎを持つ筈である。一方で、点源の強度分布に基づく予想から外れた揺らぎの存在は、予想より大きいにせよ、小さいにせよ、点源以外の成分の存在を示唆する。 この様に、天の川銀河拡散X線放射の数光年 (分角) スケールでの空間的な表面輝度の揺らぎはその起源解明の鍵であるにも関わらず、これまでX線CCDカメラを使って正確に調べられたことはない。今回、「すざく」XIS銀河面データにより、その揺らぎを測定した。(l, b)=(19°.6, 0°.0)での天の川銀河リッジX線放射 (GRXE) の2.2~5.5 分角スケールでのX線表面輝度(2.3~8 keV) の揺らぎ (標準偏差)を測定した。この際、XMM-Newtonのカタログを使い、明るい点源の寄与を除いた。統計誤差を除くと、天の川銀河拡散X線放射と宇宙背景X線を合わせた表面輝度は3.6~8.1% (1σ) 揺らぐことが分かった。この揺らぎは天の川銀河拡散X線放射が多くの暗い点源の集まりだとした場合の結果と大きく矛盾しない。この結果を日本天文学会で報告した。 天の川銀河拡散X線放射の研究を元に、「すざく」データを使った、高校物理で扱うボーア模型の学習教材を作成した。
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