研究課題/領域番号 |
25887034
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 啓祐 京都大学, 白眉センター, 助教 (40708640)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 量子エレクトロニクス / 量子コンピュータ / 量子情報 / 量子誤り訂正 / トポロジカル量子符号 / 誤り耐性量子計算 |
研究概要 |
スケーラブルな量子情報処理の実現におてい,量子状態をデコヒーレンス(量子コヒーレンスの消失)から保護しながら情報処理を行う,誤り耐性量子計算の研究は必要不可欠である.本年度は,謝り耐性量子計算の研究として包括的制御によるバルク型量子計算と少数量子ビットと量子チャネルから構成される分散型量子計算の研究を行った.バルク型量子計算の研究では,射影測定を一切用いずにトポロジカル量子誤り訂正を実行する方法である,「非測定型トポロジカル量子誤り訂正」を理論提案し解析を行った.従来の方法では,集積化された沢山の量子ビット1つ1つにアドレスして制御する必要があるが,提案した方法ではシステム全体へのパルス制御と散逸プロセスだけを用いてトポロジカル量子誤り訂正を実行することができる.この結果は既に論文としてまとめられ,arXivにて公開されている(現在投稿中).また,分散型量子計算については,超伝導量子ビットを用いた実装について共同研究をおこない,物理的実現性について検討した.この内容は既に学会等にて発表している.また,これらの研究に加え新たな量子誤り訂正符号を用いた根本的に新しい誤り耐性量子計算についての研究にも着手した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に計画していた研究は予々順調に進められた.包括的制御を用いたトポロジカル量子誤り訂正は,提案から主な解析まで完了しており,すでに論文としてまとめ,arXivにて公開している.現在,論文掲載にむけて投稿作業中である.また,この研究で得られた知見に関して新たに量子状態制御に向けて研究を進めている. また,新たな符号を用いた誤り耐性量子計算の提案も,利用する符号を特定し,誤り耐性量子計算をする手法の構築を終えている.現在,確率伝搬法や線形計画法などの最適化の手法を応用し復号化法の構築を行っている.復号化法が構築できれば,表面符号を用いた既存の方法との比較を行うことができ,新しい研究成果として発表できるであろう.
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度から継続して行っている,包括的制御を用いたバルク型量子計算の研究を進める.特に昨年度までの研究で得られた知見を発展させ,選択的操作を伴わない包括的制御とエネルギーの散逸過程を用いた高効率なスピン増幅やスピンスクイーズ状態の生成等,量子状態制御への応用法を構築する. また,これまでの誤り耐性量子計算の研究では,表面符号がもっぱら用いられてきた.しかし,表面符号では,Clifford演算が簡単に実装できないという弱点がある.これを克服するために,新しいトポロジカル符号を用いた誤り耐性量子計算を構築する.表面符号とは異なる新たな符号の探索,そして,その新しい符号を用いた誤り耐性量子計算法の構築を行う.また一般のトポロジカル符号状態の復号化に適用できるような,復号化方法を最適化法の一種である確率伝搬法や線形計画法を用いて構築する.
|