研究課題
研究活動スタート支援
本研究の最大の目的は、重力観測によって地震・火山活動起源の重力変化を検出し、固体地球内部の質量移動プロセスを理解することである。また、陸水分布の時空間変化に伴う重力擾乱(陸水擾乱)を適切に補正することも、本研究の目的の1つである。平成25年度において、本研究は鹿児島県の桜島火山で重力・陸水・気象の各種データを連続的に観測した。また、本研究は陸水擾乱を経験的にモデル化できるソフトウェアG-WATER [E]を開発し、桜島火山に適用した。その結果、このソフトウェアは桜島火山で観測された陸水擾乱を8マイクロガルの精度で再現できることが分かった。桜島火山の過去の重力データに本ソフトウェアを適用すれば、火山活動に伴う長期的な重力変動を抽出できると期待される。また、本研究では2013年2月にアメリカ合衆国アラスカ州を訪問し、ジュノーに設置している超伝導重力計iGravの保守作業を行った。また、重力計近傍に位置するオーク湖の状況を調査し、重力計~湖水位間の標高差を水準測量により測定した。この重力計では、湖水位変化・積雪・土壌水分変化などに伴う陸水擾乱のほか、2012年10月および2013年1月のM7級の地震に伴う重力変化が観測されていると考えられる。今後は地震起源の重力変化を高精度に抽出するために、重力計近傍の陸水分布を3次元的にモデル化する予定である。このほか、本研究では2つの国際学会および2つの国内学会において研究発表を行い、国内外の研究者と議論を深めた。また、桜島火山の陸水擾乱補正に関する論文を国内の学会誌に投稿し、2014年3月までに修正済み原稿を再投稿した。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、桜島火山およびアラスカにおいて重力連続観測を実施中であり、この重力データの中には地震火山起源の重力変化が含まれているものと期待される。また、陸水擾乱を補正するために各地で陸水・気象データを観測し、陸水擾乱モデリングのためのソフトウェアG-WATERを着実に準備している。このように、現時点では本研究の最大の目的である「固体地球起源の重力変化の検出」には至っていないものの、それに向けた観測および準備を確実に継続できている。以上の観点から、本研究における現在までの達成度を「(2) おおむね順調に進展している」とした。
本研究では今後も定期的に桜島火山およびアラスカを訪問し、重力・陸水・気象の連続観測を継続する。また、地震・火山活動起源の重力変化を検出できるよう、独自のソフトウェアG-WATERを用いた高精度な陸水擾乱補正を実施する。さらに、胆沢扇状地(岩手県)・浅間山(群馬・長野県)・八重山諸島(沖縄県)でこれまでに観測された重力・陸水データを取りまとめ、同様に陸水擾乱のモデル化に努める。なお、本研究の成果については、日本地球惑星科学連合大会・日本測地学会・AOGS Annual Meetingなどの学会や、測地学会誌・Journal of Geophysical Researchなどの学会誌において発表する予定である。
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