本研究は地震火山現象に伴う固体地球内部の質量移動を重力観測によって検出することをその最大の目的としてきた。また、この際に擾乱となりうる陸水変動の寄与を高精度に補正することも、本研究の目的の1つであった。 研究最終年度に当たる平成26年度には、桜島火山(鹿児島県)で観測された重力データの陸水擾乱補正に取り組んだ。まず、気象データとデジタル標高モデルを用いて各重力観測点の陸水擾乱値を経験的に求めたところ、桜島ハルタ山で観測された絶対重力変化を10マイクロガルの精度で再現できることが分かった。また、桜島島内の複数点で2007~2009年に観測された相対重力変化は、陸水擾乱の経年変化によって説明可能であることも分かった。今回作成した陸水擾乱の経験モデルを過去の重力データに適用すれば、桜島の長期的な火山活動をより高精度に検証できると期待される。 次に、本研究は浅間山(群馬・長野県)で2004年噴火時に観測された絶対重力データを再検討した。まず、気象データ・デジタル標高モデル・土壌物理パラメーターを用いて浅間山内部の水質量の4次元的分布を数値的に求めたところ、2004年の重力観測データの大部分を説明できることが分かった。また、観測値から計算値を差し引くと振幅5マイクロガルの重力残差が得られ、この重力残差は火山火道内部のマグマ上昇/下降プロセスによって説明可能であることも分かった。今回作成した陸水擾乱の物理モデルを将来の浅間山噴火時に利用することで、重力観測からマグマ位置をリアルタイムで監視できるものと期待される。 さらに、本研究では2014年から活発な噴火を継続する阿蘇山にて初期的な測地データを取得するとともに、学会や学術誌にてこれらの研究成果を発表した。
|