研究実績の概要 |
本研究は、上部マントル環境下における構成鉱物の初生的なFe3+の量の解明を目的としている。このため、マントル物質中の構成鉱物中のFe酸化数を測定し、Fe3+が含まれる場合、その生成環境を評価した。隠岐の島大久地域のレールゾライトゼノリスおよび沈積岩、黒瀬地域のハルツパージャイト1試料、モンゴルTariat地域のスピネルレールゾライト1試料を研究試料とした。島弧の上部マントル物質である隠岐の島大久地域および黒瀬地域のマントルゼノリスおよび沈積岩中のかんらん石からは、全Feの~6%のFe3+(原子数の割合)が検出された。一方、大陸の上部マントル物質であるモンゴルのスピネルレールゾライトでは、3%のFe3+が検出された。透過型電子顕微鏡およびラマン分光分析を用いた詳細な観察と分析の結果、モンゴルのスピネルレールゾライト中のかんらん石は、上部マントルの初生的なFeの酸化数を保持しており,検出されたかんらん石中のFe3+は上部マントルでかんらん石に含まれていたものと結論された。 マントルゼノリスが地表または地表付近で受けるFe酸化数の変化とその程度の解明のため、酸化の程度の異なる玄武岩およびスコリア中の単斜輝石斑晶とかんらん石斑晶の化学分析、EPMA法によるFe酸化数の測定を行った。その結果、単斜輝石斑晶では変質の影響が顕著な縁部でFe3+の量が初生値の10~20倍、一見変質を受けていないように見えるコアにおいても最大で3倍増加することが明らかになった。一方、かんらん石は地表での酸素分圧の変化によってFe2+の一部がFe3+に変化するが、かんらん石中のFe3+の量が一定量を超えると鉄酸化物として析出することを解明した。 これらの研究の成果は、国内外の学会において発表し、国際学会ゴールドシュミット2015において口頭発表を予定している。研究成果の一部は、国際誌Mineralogical Magazineに投稿し,受理されている。
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