流体力学の基礎方程式であるストークス方程式に対するアダマール変分公式について考察を行った。平成25年度においては特に、流体力学の摂動問題への変分公式の応用について指針を得るため、一般化した変分公式(高次変分)の導出およびストークス方程式の固有値に対する変分公式の導出について解析した。以下では、この2つの問題について得られた成果について述べる。 これまでの研究において、ストークス方程式の速度場および圧力に対するグリーン関数の第二次変分を解析し、高次変分導出に対する方針を得た。そこで本年度においては、実際に任意の微分階数に対するグリーン関数の変分公式の導出を試みた。この問題に関しては、グリーン関数の「領域依存性」の解析が主題となる。これに対し、アプリオリ評価のみを用いて「領域依存性」を解析した既存の結果の手法を応用することで、高次変分の存在を保証することに成功した。またそれだけではなく、形式的な計算ではあるがその表現公式を得ることに成功した。現在は、その証明の正当化に取り組んでいる。 またこれまでの研究においては、特にグリーン関数を研究対象としていた。そこで今年度はストークス方程式の固有値に対する摂動公式の導出を目指した。実際、ストークス方程式が非圧縮粘性流体の運動を記述した方程式であることを鑑みれば、固有値の解析は応用上重要な問題と考えられるからである。しかしながら、ストークス方程式の固有値は、ラプラス方程式とは異なり、その性質の殆どが明らかになっていない。たとえば、ストークス方程式においては、その第一固有値が単純であるかどうかも解決されていない。そこで本研究においては、ストークス方程式の多重度を持った固有値に対する変分公式の導出を試みた。この解析においては、神保-小杉(2009)をストークス方程式に応用し、その変分公式の導出を行った。その結果をまとめ、現在投稿準備中である。
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