研究課題/領域番号 |
25887048
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
古場 一 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (80707729)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 流体 / 曲面 / 多様体 / 動く曲面 / 方程式の導出 / オイラー方程式 / ナヴィエ・ストークス方程式 |
研究概要 |
平成25年度は、動く曲面上での流体の流れを支配する方程式の導出を行い、動く曲面上の流体の流れが曲面の動きと曲率に依存していることを数学的な観点から明らかした。 この研究の目的は、動く曲面上での流体がどのような支配のもとで流動しその流れがどのように変化していくのかを数理的手法によって解き明かすことである。具体的には、現象(物理的)かつ理論的(数学的)な観点から動く曲面上の流体方程式を導出し、その方程式の解の存在や性質を調べることである。平成25年度は、流体の持つエネルギーに着目し、数理的手法を用いて動く曲面上の流体の流れの解析を行った。具体的には、回転や並進運動をしている二次曲面上での流体の流れを考えた。その二次曲面をユークリッド三次元空間に埋め込み、流通座標の立場から流体の流れを考察し、オイラー座標とラグランジュ座標の2つの座標系から流体が満たすべき方程式の導出を行った。また、流体の粘性の有無や圧縮性や非圧縮性条件に注意しながら、それぞれの場合における動く曲面上の流体の流れを支配方程式の導出を行った。研究の成果として、動く曲面上の流体の流れを支配する方程式は、曲面の動きおよび曲面の曲率に依存していることが得られた。また、従来の研究では、曲面上の流体の流れの接方向のみの情報しかわからなかったが、本研究により曲面上の流体の流れの法線方向の情報を取り出すことに成功した。このことにより、固定された曲面が動いている場合だけでなく、曲面の変形も含めた曲面の動きにも対応している場合における動く曲面上の流体の流れの研究も可能となった。つまり、自転している地球上の流体の流れ(大気や海洋など)だけでなく、変形を伴う生体膜中の流体の流れの研究にも応用が可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題は、おおむね順調に進展していると思われる。なぜなら、動く曲面上における流体の流れを支配する方程式を数学的な仮定のもとから導出することができたからである。具体的には、エネルギーの観点から、動く曲面上における非粘性非圧縮性流体方程式、粘性非圧縮性流体方程式、非粘性圧縮性流体方程式、粘性圧縮性流体方程式の4つの場合における支配方程式を導出した。ほかにも、現象論的な立場からいくつか種類の違う方程式も得られた。また、動かない曲面上の流体方程式との対応も明らかになっており、本研究は、おおむね順調に進展していると思う。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究で、導出した動く曲面上の流体方程式の解の存在性を示す。まず、動く曲面上での非粘性非圧縮性流体方程式の時間局所解の構築を試みる。エネルギーに着目し関数クラスを設定し、その関数空間内での方程式の時間局所可解性を論じる。曲面が動かなければ、従来の研究でエネルギーを考えることができる関数空間(L2)の性質がわかっており、解析が可能である。しかし、曲面が動いている場合におけるL2空間の性質はあまり研究が進んでいない。そのため、方程式を解くための基礎となる動く曲面上の関数空間の性質を調べる。曲面が動いている場合の解析は非常に困難だが、抽象的なヒルベルト空間理論を用いて、動く曲面上の流体方程式の解の存在性をいう。時間局所解が構成できれば、解の存在時間を調べ、時間大域的な解の構成を試みる。研究が順調に進めば、動く曲面上における粘性非圧縮性流体方程式の解の存在や性質の調査を行っていく。
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