研究課題/領域番号 |
25887051
|
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
石川 遼子 国立天文台, ひので科学プロジェクト, 特任助教 (00709636)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 太陽物理学 / プラズマ・核融合 / 偏光 / 磁場 |
研究概要 |
太陽観測衛星「ひので」によって、激しく運動する彩層~遷移層プラズマの姿が明らかとなった。これらの動的現象の定量的理解を進めるためには、彩層~遷移層での磁場測定が急務となっている。しかし、磁場測定手法としてこれまで広く用いられてきたゼーマン効果の検出は、彩層や遷移層のスペクトル線では非常に困難である。そのような状況を打破すると期待されているのが量子論的ハンレ効果であり、ここ最近その理論的研究が急速に進展しつつある。本研究の目的は、観測した偏光情報から量子論的ハンレ効果を用いて磁場を導出するデータ解析手法を確立することにある。本研究成果は、世界で初めて真空紫外線領域にあるライマンα輝線での高精度偏光分光観測を行うロケット実験CLASP(平成27年打ち上げ予定)で実証し、次期太陽観測衛星SOLAR-Cへの応用を目指すものである。 平成25年度は、ロケット実験CLASPの観測を想定し、ライマンα輝線でのハンレ効果を用いることで確実に求めることのできる磁場情報を精査した。その上で、CLASPで用いるべきデータ解析手法の基本方針を確立した。まず、太陽静穏領域の平行平板大気モデルを仮定して、任意のベクトル磁場(強度・仰角・方位角)を任意の方向から観測する場合に生じる偏光線輪郭を計算し、そのデータベースを構築した。そして、このデータベースを用いることで、CLASPのデータ解析を模擬し逆問題を解き、ハンレ効果に感度のある磁場強度範囲や解の縮退を調べた。検討の結果、[1] 最適な観測ターゲットは太陽鉛直方向から傾いた比較的弱い (50 G以下) 磁場強度を持つ領域であること、[2] 解の不定性を回避し、磁場強度、方位角、傾き角の3つの磁場成分を一意に決定するためには他観測機器との共同観測が必須、という2点が明らかとなった。これらの研究成果を元に、CLASPと他観測衛星や地上観測所との共同観測計画の立案、データ解析手法の詳細検討を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度に実施予定としていた、①偏光線輪郭のデータベースの構築、②データ解析手法の基本方針の確定を完了することができた。さらに、これらの研究成果をまとめた論文の査読誌への掲載が決定しており、本研究は当初の計画以上に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を発展させて、研究を進めていく予定である。太陽彩層~遷移層は、ダイナミックな活動現象にみちあふれており、その大気モデルは多様性に富んでいる。平成25年度は、太陽静穏領域の平行平板大気を用いて検討を行ってきたが、今後は様々な大気モデルを用いて同様の検討を行う。そして、大気モデルがかわった場合のベクトル磁場の決定精度を調べ、ハンレ効果を用いた磁場診断手法における大気モデル決定の重要性を明らかにする。観測データから大気モデルを決定するために、他観測機器との共同観測が重要となることが予想され、ロケット実験CLASPの観測計画をさらにブラッシュアップさせる。また、ハンレ効果は新しい磁場診断手法として期待されており、本研究成果をCLASPで実施するライマンα輝線以外のスペクトル線にも拡張する。そして、次期太陽観測衛星SOLAR-Cや地上観測装置といった将来計画の科学要求の検討も進めていきたい。
|